今日、堀場製作所の堀場社長(兼会長)に話してもらった。京都企業の社長として3回目である。どの社長も個性的、聞いていて「成程」と思う。今日は、日本電産との対比がよかった。
日本電産の永守社長は「動」、堀場社長は「静」だろうか。この対比である。これが瞬間的というか最初の感想だった。しかし、瞬間では正しい答えが出ない。しばらく話を聞いていると、「静」の中に大きな動きがあると理解できてくる。堀場社長が強調されていた1つが、時間をかける対話だった。確かにそうである。短期に見切ってはいけないし、短期に見切る相手があったとしたら、彼らは「そんな程度のものでしかない」なのだろう。時間をかけ、信頼関係を築くことの重要性を何回か話されていた。
もう1つ、印象に残ったのが、失敗を恐れないことと、逆境の中でこそ経営の本質が試されるとのことだった。失敗は誰にでも常にある。大きな失敗を経験しない人間は弱い。誰もがそう言う。しかし、社長として、失敗を許す度量が必要である。この度量が、すべての企業にそろっているのだろうか。
堀場社長の趣味はヨットだとのこと。元々の夢が戦闘機のパイロットだったらしいが、その飛行機とヨットの原理は同じだと言われた。それはともかく、ヨットの場合、順風ではスピードに大きな差がつかない。最大、風の速度と同じでしか進まないとのことである。そうではなく、逆風の時にスピードに差が出るというのがモットーだとのこと。経営環境が悪くなったとき、その中で生き残り、少しでも他の企業よりも前に出るのが重要との意味である。
そう言うのは簡単だが、実行するには困難である。この関連で、6年程度の任期で社長が交代していたのでは、重要な投資ができないとも言われていた。新しい事業において数年間の損失が出るのは当たり前だが、6年程度の任期で交代することが決まっていたのでは、重要なリスクは取れないとの意味である。思うに、社長の任期は長くても良くないし、短くても良くない。とすれば、結局のところ、交代のタイミングとは、社長の自己評価の能力であり、現代風に言うと社外役員の評価能力に依存するのだろうが、両方ともに、とくに後者に関して、社外役員の活躍できない状況が多いだろうと思っている。
最後に、グローバル化について、日本企業は「インターナショナル化してはいるが、グローバル化していない」との評価があった。堀場製作所の場合、従業員のうち、日本人比率は半分を切ったそうである。欧米をはじめとする現地法人の管理体制も、現地人と日本人の2トップせいだそうである。また、社内の会議も早くから英語だとか。失敗の歴史を踏まえ、自然とそうなったのだろう。
いずれにしても、今回で3社目の京都企業である。東京系の企業からすると複雑で、一筋縄でいかないのが京都企業だと思えてくる。この京都企業に関する全体的な感想は後日にまた。
2014/07/03