川北英隆のブログ

年金は何歳から受け取るべきか

政府の偉い大臣だったか、公的年金を75歳から受け取れるようにしたいと発言したことが議論を生んでいる。現在は65歳からの支給開始だが、それを70歳からにすることが可能。では何歳からが有利か。
多少議論を混乱させた感があるのが、年金財政が苦しいから、65歳からの支給開始を68歳とか70歳に遅らせようとの案が同時並行的にくすぶっていることである。今回の偉い大臣(田村厚労大臣)の発言は、この議論とは別である。あくまでも公的年金の受給権者が自主的な判断で70歳からとか、75歳からとか選べる制度のことである。
もちろん、自主的に支給開始年齢を遅らせると、支払われる年金額は増えるように計算される。ここで誤解してはならないことがある。年金額が増えるといっても、まず、支払い開始を後ろ倒しにした分の金利を考えないといけない。さらに重要なことは、年金が支給されるまでに死んでしまう事態である。死ねば、増額された年金は絵に描いた餅にすぎなくなる。そこは政府もちゃんと計算しているから、増えたといつても、見かけの年金額が増えているだけにすぎない。ここまでは何の損得もないと結論することができる。
蛇足。「健康やし、そんなに早く死なないから、少しでも多く年金をもらいたい」と考える場合もあるだろう。しかし、これは欲深い考えかもしれない。65歳を超えてくると、いつ何が原因で死ぬのか、誰も確実なことは言えないのだから。
さらに、もっと重要なことが2つある。
1つは「政府の約束違反」である。「公的年金は逃げ水、100年の不作」と6/20のブログに書いたが、たとえば3年とか5年とか支給開始を引き延ばしているうちに、制度としての年金が逃げてしまいかねない。つまり、支払金額が引き下げられてしまう危険性が十二分にある。
生命保険会社のような私的な年金であれば、約束違反は信用の失墜であるから、その生命保険会社は潰れる。しかし、政府の約束は本当の意味の約束ではなく、あくまでも計算上の制度設計であり、実際に払われるまで「計算の前提が違ってきたので」と言われかねない。実際のところ、この計算の前提が違ってきた歴史の積み重ねでもある。
もう1つは、個人にとっての時間の価値である。個人的には70歳はともかく、75歳になって年金として大金を支払ってもらったとしても、「それを使えないやろ」と思っている。今ならフカのように飲み食いできても、75歳になればサンマやイワシになっているかもしれない。まだ若さが残っているうちに年金をもらい、ぱっと使うのが正しい生き方でないのか。
ということで、偉い大臣の真意はともかく、その案にはワナがある。現在の制度のとおりに、もらえる時から公的年金をもらうのが大正解だと考える。

2014/07/12


トップへ戻る