川北英隆のブログ

日経新聞1面記事の読み方

今朝、外が意外に静かだったので「台風が潰れたのかな」と思い、ネットのニュースを見てみた。と、台風はまだ四国をうろうろでびっくり。ついでに目に入ったGPIFの記事で仰天。日経新聞だ。
「公的年金、株式運用の上限撤廃」という文字だった。朝刊の一面では「株投資の上限撤廃」という文字が躍っている。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の新しい基本ポートフォリオ(資産配分の骨格)については、まだ議論の最中と漏れ聞いていた。それで仰天した次第だが、よく読むと、新しい基本ポートフォリオが決まるまでの暫定的な措置らしい。「さもありなん」である。というのも、日経平均株価が7月末まで上げていたから。
もう少し説明しておく。今年3月末において運用資金127兆円に占める国内株の割合は16.5%だったそれが7月末にどうなったのか試算すると(国内株だけが日経平均株価と同じ割合で上昇したと仮定して計算すると)、17.2%となる。現在の基本ポートフォリオにおける国内株の18%に接近している。他方、「上意」により、国内株の保有比率を上げることが喫緊の宿題である。「これ以上株価が上がって、日経平均が16000円をクリアし、国内株の比率が18%を超えることになれば、どうすりゃいいのさ」と考えるのが正しい役人である。ルールに忠実に、上限を超えた国内株を売ってしまうと、上意と逆方向である。とすれば「一時的に基本ポートフォリオの機能を停止すればいいじゃん」となる。
実際、GPIFの運用委員会は8/5に開催されている。上層部の意思を確認し、会議資料を作るタイミングを考えると、8/5に「一時的な基本ポートフォリオの機能を停止」が決議されたと推測できる。よく読むと新聞にも8/5に「撤廃した」とある。日本語として正しくは、一時的な上限の廃止だから「停止」だろうが。それと、「上限を超えても(国内株を)買い増せる」と記事にあるのは書きすぎである。「上限を超えても保有を続けられる」が正しいと思う。
先日、さる経済政策分野の長老を囲む定期会合に出席していたところ、「日経新聞では経済に関する偏向記事が続いている」「とくに経済観測が明る過ぎて、今年4-6月の消費税増税の影響を大きく外した」ことと、「平成何年なんて止めて、西暦かせめて昭和にしてほしい」との話題に花が咲いた。それほど日経新聞の評判が悪いのかと、妙に納得してしまう。
少し言い訳しておくと(日経新聞の回し者ではないが、知り合いも多いので)、今日のGPIFの記事の続きが3面にあり、その最後の部分は客観的に公的資金による株式購入のデメリットを指摘している。日経の良心だろう。
日経新聞の読み方としては次のとおり。まず、1面の見出しは「まゆつば」で眺めること。記事の内容も1面部分だけでなく、他の面に続きがあればそれを、もしくは他紙に記事があればそれも参考にすべき。1面は読者心理誘導的な傾向が強すぎる。

2014/08/10


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