遅ればせながら、財務省が18日に公表した8月の貿易統計についてコメントしておく。8月の赤字額(輸出?輸入)は少し縮小した。燃料を含む一次産品輸入の減少が要因であり、輸出は冴えない。
季節要因をならした数値でみると、8月の輸出額は5.97兆円、輸入は6.90兆円だった。差し引き、9.24兆円の輸入超過である。前月との比較では、輸出は弱含み横ばい、輸入は1兆円ばかり減少している。傾向を見るため、当月を含む過去3ヵ月の平均値でみると、輸出は微増傾向、輸入は弱含み横ばい気味である。
輸入が弱い背景には消費税率アップの駆け込みの反動もあろうが、原料・燃料価格がドルベースで下落傾向にあることが大きいと考えられる。品目別において、鉄鉱石、石炭の輸入金額が大きく落ち込んでいることも、ドル価格の下落を反映している。
一方、輸出は伸びていない。輸出の数量を地域別にみても、どの地域も強くない。逆に、景気が回復基調にあるアメリカ向けが弱いのは、日本の輸出構造が変化している(すなわち、国内製品の競争力が低下し、現地生産の強化が図られている)ことの明確な証拠だろう。
付け加えれば、現地生産の強化によって輸出が伸びないことを悲観すべきではなく、望ましい。また、この傾向が強化されるのは当然の趨勢であるから(むしろ遅きに失した感がある)、輸入超過は続かざるをえない。
そうだとすれば、円安は望ましくない。輸入超過分だけ、円安は日本国内全体にとってデメリットである(海外から高い産品を買うことを意味しているため)。もちろん、海外進出した企業が大いに活躍し、利益を日本に還元してくれれば、円安のデメリットはいずれ解消されるだろう。問題は、その解消までにどれだけの時間が必要なのかである。企業の成果を心待ちしたいものだ。
2014/09/21