川北英隆のブログ

貿易統計2014年9月

昨日、9月の貿易統計が公表された。今日の日経朝刊にかなり詳細に分析記事が載っていたので、ブログでは簡単に紹介しておく。ポイントは輸出入差額が10,701億円の赤字に膨らんだことである。
この赤字額は季節的変動を調整したものであり、趨勢を示している。この赤字額の大きさは消費税率引き上げ後で最大である。実勢として、日本の輸出入は、月々1兆円の赤字を続けているわけだ。日本のGDP(国内総生産が)が、月ベースで40兆円程度であることと比較しておきたい。
もっとも、昨年の秋(消費税率引き上げ前の駆け込みがない状態)と比較すると、当時は1.1兆円とか1.2兆円の赤字であったから、少しは改善していることになる。
しかし、その改善が輸出の回復のおかげとは到底言えない。輸出数量(実質的な輸出の量)が低迷したままだからである。赤字額の改善(縮小)の多くは、輸入価格のドルベースでの下落による。石炭、鉄鉱石、そして最近では原油価格もドルベースで下落している。このおかげで、円安にもかかわらず、円ベースでの輸入価格が上昇していない。ガソリン価格の低下が報道されることに象徴されている。
今後の輸出入差額を占うと、簡単に赤字は縮小しないだろう。「原油価格の下落は日本経済にとっての福音」的な観測が踊っているが、これは眉唾ものである。原油価格が下落するのは世界経済に活力がないからであり、当然これは日本にもマイナスの影響をもたらす。つまり、輸出を抑制する。ということもあり、輸出入差額の赤字が簡単に縮小するとは考えられない。

2014/10/23


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