川北英隆のブログ

細を穿って大局を失う

今日、7-9月期のGDP(国内総生産)の改定値が公表された。それによると、最初の速報値の前期比年率1.6%減から悪化し、同1.9%減になった。これに対する新聞のコメントが異常すぎる。
民間調査機関の「上方修正予想覆す」とか「GDP民間予測また違った」とかの見出しが踊っている。民間が、最初の速報値よりも上方修正されるのではないかと予想していたのに、実際は下方修正だったから、こういう見出しになった。では、民間の事前の予想はというと、年率0.5%減というものである。
年率だから誇張されているが、単純な前期比の数値は年率のほぼ1/4だから、速報値は0.4%減、今回の改定値が0.5%減、民間の事前予想は0.1%減となる。
この3つの数字を並べてみると、ほとんどが思うのは(多少、この世界の専門家の片隅にいる僕もそうだが)、「それでどうしたんや」だろう。民間の事前予想はともかく、速報値と改定値の差は微妙である。0.1%の差なんて完全に誤差の範囲である。
ほとんど想像がつくように、GDP統計といったところで、国勢調査のようにいちいちすべての企業や家計を調べているわけでない。サンプル調査である特定の調査に基づいて推計した数値である。
このため、数値には誤差があり、0.1%程度の違いは常だといって間違いない。推定方法を改定すれば、プラスがマイナスになるし、その逆も同じようにありうる。
言いたいことは、速報値と比べて改定値がどうなったということに、何の重要性もないということである。重要なのは、GDPであれば、その水準である。内閣府のHPからGDPの数値をダウンロードし、グラフを書けばすぐにわかるように、企業や家計の実感に直結する名目GDPの水準が低迷している。このことを取り上げずに、「速報値が・・改定値が・・」と書いたところでどうしようもないと思うのだが。
新聞記者は素人だから仕方ないとして、その新聞記者と接する正統派のエコノミストが新聞記者にどうように情報を流しているのか。多分、「ワテはエコノミストとしてすごいんや」と強調するために、コマセよろしく、どうでもいい、しかし評価がすぐに決まる目先のことを話したがるのだろう。

2014/12/08


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