川北英隆のブログ

配当の多い株が素晴らしいのか

最近、多くの配当を株主に配る企業に注目が集まる。では、本当にそんな株(企業)に投資することが望ましいのか。配当性向(配当/利益)と投資対象としての魅力度を整理しておきたい。
前提として、企業が合理的に行動しているのかどうか、まず問われる。合理的とは、企業の経営者が保身ではなく、企業の従業員や株主のために十分計算して行動しているということである。もう少し言えば、従業員にちゃんとした給与を払い(これは当たり前のことなので、ここから先は書かない)、株主の期待に応えるように経営している企業である。
合理的に行動しているのなら、無配でもいいから成長する企業が一番である。注意しておかないといけないのは、株主の期待に応えて成長するためには、十分な利益を生み出す事業に投資して成長しなければならない(正確に書くと小難しくなるので、以上のあいまいな表現にとどめておく)。反対に十分な投資先がない場合、利益のうち、投資できなかった部分を配当に回すことになる。要するに、配当性向の高い企業は、成長力に乏しい(そう経営者も考えている)企業である。
ここまでをまとめると、株式として魅力ある企業とは、企業が合理的に行動しているとするのなら、まずは成長できる企業である。次に、株主資本に対してたくさん儲け、それを配当してくれる企業である。
では、たくさん配当するようになった企業を、日本の新聞がもて囃すのは何のことなのか。
日本企業の多くは合理的な経営をしてこなかった。成長するための投資先がないにもかかわらず、利益の中からスズメの涙程度の配当しかせずに、残りを金庫の中にたんまりと貯めこみ、古漬けよろしくそのまま寝かせ、腐らせていた。
しかし、企業経営が合理的でなければ、投資家からすれば「怪しげな企業」「投資したら損をしそうな企業」でしかない。そんな企業の株式を買いたいなんて、トンマな投資家でないかぎり、誰も思わない。
この明らかな事実に日本企業もようやく気づいてきたのである。今、そこに気づいた企業は、他の多くの日本企業から一歩抜けだした企業である。そうであるから、投資家が、そして新聞が注目する。
このように考えれば、配当の多い企業は投資対象となる資格がある。しかし、である。もしも合理的な経営よろしく成長している企業があるのなら、配当の多寡には目をつむり、最優先の投資対象候補としてリストアップすべきであることに何ら変わりない。

2015/02/11


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