「国家崩潰、すわ日本か」とは誰も思わない。しかし、今の日本の風潮を見聞きするにつけ、国家崩潰の前兆として何が生じるのか、気にせざるをえない。その例として、いくつか思い出す。
最近の例はイエメンである。数日前、崩潰の危機と報じられた。もはや国家の体をなしていないのだろう。
それを身近に感じたのは「イエメンからの脱出記」で書いた飛行機便の出鱈目である。航空会社が好き勝手に運行させている、つまり国の統制が効いていない証拠である。
もう1つ、イエメンで思ったのは通貨である。ソコトラ島ではイエメンの通貨(イエメンリアル)へのドルからの両替は難しく(円は無理とのことだった)、カタール(ドーハの飛行場)かUAEでと言われていた。旅行会社が事前に現地調査した結果に基づく情報だろう。しかし、実際にはカタールでもUAEでも、イエメンの通貨は両替の対象になっていなかった。
それで問題があったのかというと、とくにない。島ではドルが通用していた。地元の商店では現地通貨建ての値段を提示されたが、ドルしかないと言うと、ドルでの価格を提示してくれる。交換比率は事前に調べた率に近い。思うに、近隣国ではイエメン通貨への信任はゼロに近くなっていたのだろう。すでに近隣国にとってイエメンは崩潰寸前だったわけだ。島で提示されたドルとの交換比率も、圧倒的に地元に有利だったと思う。
次の例はアルジャリアの飛行機である。ここでも国内便のスケジュールは出鱈目だったものの、数時間遅れでは飛んだ。一番奇異に感じたのは預けた荷物のチェックである。何回も調べられる。搭乗ゲートを出て、飛行機のタラップを上がる直前も、自分の荷物を指し示さないといけない。
今もそうだが、アルジェリアは実質的に独裁政権である。それだけに反対勢力が多く、締め付けが厳しいのだろう。実際、アラブの春では政権が揺らぎかけた。
最後にロシアである。ロシアといっても、山登りでカムチャツカとウラジオストクに行っただけだが(思い出すと、モスクワにトランジットで降りたこともあったが)、成田とカムチャツキー間を飛ぶ飛行機はボロボロだったし(これは崩壊と直接関係ないか)、国内便の荷物の重量制限はびっくりするくらい厳しかった。「隣のロシア人のオッチャンの体重は、日本人の体重に荷物すべてを合わせたより重そうやで」と、ロシア語ができれば言いたいくらいだった。でも最後に、ツアーガイドが少し袖の下を渡すと、多少のことには目をつぶってくれた。すでにプーチンの政権になっていた頃の話である。
合理的理由に乏しい規則にやたら厳格なのに、(袖の下を容認するような)自分にはやさしい国とは何か。どこかの国と、その議員を彷彿させる。どこかの国の話は稿を改めて。
2015/02/14