川北英隆のブログ

変な大学に当然の名刺事件

社会人ともなると、日本の社会では名刺は常識である。名刺がなくても「そやな」と許されるのは、子供か老人か主婦だろう。しかしである、その常識が国立大学では通用しないようだ。
国立大学とは書いたものの、実情を知っているのは僕が勤めているK大学だけだが、そこでは何がどうなっているのか。名刺の印刷代を、公費から(つまり国が運営費として大学に配分している予算の一部を、大学が教員に教育・研究のため活動費として使っていいよと言っている資金から)支払うことはできない。
つまり、教育・研究のために名刺を使うことはないという想定なのだろう。大学とは社会と断絶した世界だということになる。
私立大学は大学の予算で名刺を印刷してくれた。2つの私立大学で教員生活をしたが、赴任した瞬間に名刺が手渡された。それが、国立大学では違っていた。「事務がとろいから、名刺はしばらく後なのかな」と思っていたところ、ある日、先輩の教員から「名刺は自腹で作るんや」と教えられた。変ではあるが規則だし、「変やん」と騒ぐことも、たかが名刺代ごときでは時間の無駄だし、ずっと自腹で作ってきた。
ところが、である。新しい秘書のSさんが、「外部から招く講師やその事務方と会う際に名刺が必要」と言ってきた。名刺が必要なのは当然なのだが、規則があることだし、それを説明した後、「総務掛に、今どうなっているのか質問したらどうや」と言ってみた。その結果は、やはり規則は変わっていなかった。ではどうしたのか。先輩の女性が名刺ソフトとプリンターで自作しているとのこと。Sさんもその方法で対処することとなった。
変な規則である。名刺は酒やタバコと同じ嗜好品扱いなのか。名刺を使う先は飲み屋しかないと思っているのか。次に文科省の役人と会う時には、「名刺は嗜好品なので、手持ちがなくて」とか、「これ、1枚50円いただきます」とか言ってみようかとも思うが、残念ながら文科省の役人と会うことは他の役所と比べて圧倒的に少ない。困ったことだが、僕としてはもう1年だけの職場なので、やはりたかが名刺代で騒ぐ気はしない。

2015/03/03


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