株式市場やファンドの投資に関係していると、とみに感じるのは「株価を上げたい」とのお上の意図である。直接的ではないものの、陰に陽に、株価への関与が目立っている。
先日、ある年金ファンド(ファンドの出資者、すなわち最近の呼び名でいうとアセットオーナー)と話をしていると、どうしても、このお上の意図に話が及んでしまわざるをえなかった。この年金ファンド自身には、民間企業の年金でもあるので、直接には何のお達しもない。しかし、「公的年金が日本株のウェイトを上げるのだから、我々も」との動きが、アセットオーナーの間で目立つようである。日本として反省しなければならない点としての、「右へ倣え」の習性である。
また、お上の声が、公的なアセットオーナーの内部に混乱をもたらしているように感じる。この点は事実を確認した上で、いずれ報告したい。
戻って、その時の話として、「株価が、大きく下がることなく上がり続けることはありえない」との市場の歴史が語られた。ましてや「日本経済はアメリカ次第なのだから」との懸念についても話しあった。
観察していると、アメリカ経済は立ち直ろうとしているのだが、その足をヨーロッパが、そして日本が引っ張り下ろそうとしている。先進国は「蜘蛛の糸」のように、他の抜け駆けを許さない状態に陥っている。かといって、前途洋々たるはずの発展途上国の将来も不透明、多くの問題をかかえており、先進国に取って代わる勢いに欠けている。やはり日本の1950年以降の急速かつ曇りの少ない発展は特異な事例だったのかもしれない。
そこで、世界経済が後退期に入り、株価が下がった時、急速に日本株のウェイトを上げた年金に多額の損失が生じるはずだが、その時、世論がその多額の損失を許すのだろうかとの懸念に結論が達した。なかなか怪しげな日本の株式市場である。未だ、株価を完全にコントロールできた試しのないのが現実の経済である。
2015/04/10