今日の日経の5面に「日本株、なお割安」とアメリカはタイヨウ・パシフィックのCEOが語ったとある。その内容を読むと、ポジショントークでないのなら、ミスリードだとしか思えない。
まず、PBR(株価純資産倍率)で日本株が割安であり、1倍割れの銘柄が多いと指摘し、アメリカなみの2倍付近で評価されてもおかしくないとする。このPBRの水準だけを根拠に日本株が割安だとするのでは、投資のプロ失格だろう。もしくは公的年金に媚を売るためのポジショントークとしか思えない。
真実は、企業価値破壊的な企業だから、株式の時価総額が純資産に届いていないだけである。もしもタイヨウ・パシフィックが「PBR1倍割れはすぐさま買いだ」と本当にそう信じているのなら、拙著の『「市場」ではなく「企業」を買う株式投資』でも読んでもらいたいものだ。
タイヨウ・パシフィックが公的年金から委託されているファンドは、日経にも書いてあったように、「中小型株中心におよそ40銘柄に投資」「割安に放置されていた銘柄だ」とする。また、その後の記事の内容から推察できるように、コーポレートガバナンスに重点を置いているようだ。実際、タイヨウ・パシフィックの投資スタンスは「経営陣と協力関係を築き、企業価値の向上を目指すこと」とされる。
このファンドとしての特性を示さないことには、「日本株にPBR1倍割れの銘柄が多く、それらは割安」との発言はミスリードである。経営陣と敵対的か友好的かはともかく、経営に影響を与えることで企業価値破壊的な経営から脱却させてはじめて、「割安だった」と言えるのである。
結論である。経営に影響力のない一般の投資家としては、「日本株は割安」とすぐさま信じてはいけない。
2015/04/12