たくさん配当する企業が良い会社なのか。悪い会社ではない。しかし、最良の会社とは言えない。最良の会社は無配である。もちろん、最悪の会社も無配である。一律に企業を評価してはいけない。
無配で最良の会社だった例は、残念ながら日本で思いつかない。海外では、現在のグーグルがそうである。バークシャーハサウェイ、アマゾンもそうである。かつてのマイクロソフト、アップルも思い出す。これらの会社は無配ながら株価の上昇が続いている、もしくは続いていた。その結果、投資家に多大な利益をもたらしている。
何故なのか。理由は簡単、事業で稼いだ利益を、将来の事業の成長のために投資して、雪だるま式に成長してきたから。これらの企業の目の前に事業投資のチャンスが山ほど転がっている(転がっていた)ことになる。逆に、配当を始めたことは、事業のチャンスが少なくなっているか、アップルのように利益が巨大になりすぎて、事業チャンスが相対的に小さくなってしまったことを意味する。
日本企業の経営力の貧弱さは、経営としての配当政策がないことである。「多くの企業が当期純利益の30%を配当として支払うと言っているから、わが社も30%」という企業が多すぎるのではないか。成長のチャンスがどれだけあり、配当として支払える割合が何割なのか、考えている企業がどれだけあるのか。
「物言う株主」にしても、プロの投資家にしても、配当政策についてどの程度理解しているのか。その証拠に、4/21の日経新聞に掲載された農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)の設立記念セミナーの講演要旨を見て、「配当に対して懐疑的な講演内容でしたね」と僕自身、批判?を受けたことがあるし、直接の発言者である奥野氏にも問い合わせが多いとか。
配当と企業成長と事業利益率の関係については、『「市場」ではなく「企業」を買う株式投資』の僕が書いた章を見てほしい。すばらしい事業チャンスをかかえている企業に配当を求めるなんて愚の骨頂であること、普通の企業、ダメな企業には成長ではなく配当を求めるべきことが理解できるだろう。
2015/04/30