日経新聞を読んでいて最近思うのは、日銀の株式購入、実際にはETF(上場投資信託)の買いに関する記事が目立つということである。この段階になって日銀が株式を買うのは「やりすぎ」でしかない。
2月から4月にかけ、「順調」に上げてきた日経平均が5月に入って少し変調である。とはいえ、企業収益からして高い位置にまで達したのだから、「下げ過ぎ」でないのも確かである。それなのに、日銀が株式を買っているという。
ここで思い出さないといけないのは、アメリカFRB(連邦準備制度理事会、日本の日銀に相当)の理事長であるイエレン氏が、つい最近、「アメリカの株価は高すぎる」という主旨の発言をしたことである。それと日銀の行動とを対比するのがいい。日本の経済も株価も(防衛もかな)、アメリカ頼みであることからすれば、「アメリカの株が高いのなら、日本もそうやろ」「アメリカFRBの判断に日銀としても配慮して当然」と思えるのに、その後も日銀が日本株を買い続けるというのは、どういう判断をしているのか。
この判断は二重の意味で間違っている。
1つは、日銀が資産価格のバブル(株価のバブル)を助長しかねないという意味での間違いである。日銀の今の審議委員には(昔から、そうかな)残念ながら株価の専門家がいない。これも影響しているのか、それとも安倍内閣からの圧力があるのか。現在の株式市場は全体として「売り」とは言わないものの、「買い」ではないだろう。株価をバブル水準にまで煽れば、1990年から2010年代までと同様、日本は再び株式市場を(そればかりでなく経済全体を)壊してしまいかねないのに。
2つに、日銀の株式購入が個別企業ではないことである。この結果、「ダメ企業の株式」も日銀が買うことになる。こんな株式投資は日本企業を甘やかしてしまう。つまり、牛丼3社のように、経済に消耗戦を強いてしまいかねない。
株式購入に関して日銀の正しい政策は、極端に売られた時だけに買う政策である。株価の極端な下落が経済に混乱を招くのではという危惧を、僕としては「正しくない」と全面否定はしはしないからである(本音は日銀が株式を購入するなんて、やりすぎやんと思っているのだが)。
結論として、株価が正常な状態に戻ったなら、ETFのように「どの銘柄であっても、しっかり管理してくれるファンドに入っていれば買い対象としていい」との基準に依拠した株式購入を、日銀として即刻停止すべきである。「個別銘柄の判断はできない、差し控える」というのであれば、それによって「株価が高いのか安いのかの判断はできない」ことを日銀として表明している。そうであるから、PERなどの指標を欧米と比較しつつ市場全体を眺めたとして、株価水準が遜色のない状況に達したならば、それ以上の株価の追求は、株の素人としての日銀に期待されていないはずである。
2015/05/13