今日の日経15面の「一目均衡」に「トヨタが投じる一石」として、この7月にも発行される種類株への言及があり、「(この種類株の)性格は債券に近い」とあるが、不正確である。
正しくは、「転換社債に近い」と書くべきである。それはともかく、トヨタが発行する種類株の特徴は次のとおりである。転換社債に近いことが理解できるだろう。
・普通株と同等の議決権を有する
・配当と残余財産への請求権は普通株に優先する
・譲渡制限が付与され、非上場である
・普通株への転換請求権、発行会社に対する買い取り請求権、発行会社による全株買い取りら請求権が付与される
・1株の発行価格は普通株の株価よりも20%以上高い水準とする
・発行から5年程度経過後に種類株を普通株に転換するか、発行会社に対して発行価格を基準とした価格での取得請求が可能となる(ただし発行決議で定める日のみ)
・発行会社は5年程度経過後に種類株の全部を取得することができる(ただし発行決議で定める日)
・配当について、当初の事業年度は発行価格を基準とした価格に0.5%を乗じた金額とし、その後毎年0.5%ずつ上昇し、6事業年度以降は2.5%とする
では、この種類株は「買い」なのか。今、トヨタの株式を買うと、配当利回りが2.4%ある。種類株の利回りは、5年後には2.5%と株式とほぼ同じになるものの、それ以前は低い。その代わりに、トヨタの株が値下がりしていたとしても、種類株は5年後に発行価格で買い戻してもらえる。もっとも、値上がり益は享受できるが、発行価格が株式よりも20%以上高いから、この分だけ株式と比べて見劣りする。
つまり、新たに発行される種類株は、安全性は高いものの、ハイリターンは得られない。世の中はうまくできていて、「安い買い物はない」の典型例である。自分の好みで、株式にするか、この種類株にするのかを決めるしかない。
2015/05/19