川北英隆のブログ

ギリシャ問題の想定外の展開

誰もギリシャの現政権がここまで強硬だとは想定しなかったのだろう。むしろ数日前は楽観的な観測さえ出ていた。だから、7/5に国民投票と言われた瞬間、市場は完全に青くなった。
以前にも書いたように、ユーロ圏の拡大というヨーロッパの戦略が破綻しかかっている。気質も考え方も異なるヨーロッパ全土にユーロという統一通貨を持ち込むという発想自身が大胆すぎたと思える。
以前から感じているが、今のヨーロッパの指導者層(象徴的には貴族層)には原理主義的な、つまり自分たちの発想や行動が高邁であり、民衆や周辺国(彼らからすれば下国であり、日本も含まれている)は当然に自分たちの考えに従うべきだとの発想が潜在的に流れている。だから、周辺国の囲い込みというか、間接的な政策指導を行ったというべきだろう。
しかし、ギリシャはかつての先進国である(失礼、今もそうだというのがギリシャ国民の意識だろう)。今の、成り上がったヨーロッパ主要国の言いなりには簡単には従わない。自分たちの発想を大切にする。この結果、現在のヨーロッパ主要国の原理主義が行き詰ったのである。
国民投票の結果はわからない。現時点の調査では「ユーロに残りたい」との結果が出そうだとされるが、そうなったとしても、その先は依然として不透明である。現政権が「ユーロ圏の脅し」を強調しているから、国民投票のすぐ後に総選挙に持ち込むかもしれない。そうだとして、総選挙でどういう政権が成立するのか、その政権がどう行動するのか、誰にもわからない。今の市場の感覚とすれば、ギリシャがユーロ圏離脱を決意したほうがすっきりする。悪材料の出尽くしである。とはいえ、ギリシャがユーロを離脱して経済が混乱すれば、その隙につけ入ろうという国があるため、その後にどうなるのかは中長期的に大問題だが。
いずれにしろ、ユーロを強固にして米ドルに対抗しようという壮大な構想が潰えようとしている。7/5にギリシャが残るも地獄、離脱するも地獄である。

2015/06/29


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