最近盛り上がった話題が、インデックス運用に対して支払う手数料のあり方である。インデックス運用は投資対象銘柄に関する調査と、選択をしないから、運用に支払う手数料も安い。でも、このことを理解している投資家が少なすぎる。
日本のプロと称される投資家の多くは、実のところ素人である。それも正真正銘の素人より性質が悪いのは、投資理論の表面をかじっている。だから、「株価指数を真似るにすぎないインデックス運用のコストは安い」「だから外部にインデックス運用の委託をする場合、とことん値切っていい」と考えている。
そこまではいいとして、お上から「株主総会で議決権行使をすべきだ」と言われた瞬間に論理の破綻が生じる。その表れが、運用委託先(アセットマネジメント会社)に対して、「インデックス運用であっても議決権行使をしろ」と強要することである。「議決権行使なんて簡単やろ」という発想が根底にある。しかし、本当のプロなら、議決権行使が生半可なものでないと知っている。たとえば、スチュワードシップコードの実戦である。また、行使のための判断を念入りにするため、不断の調査が必要となる。いずれも無コストでは不可能なのは明白である。
このコストをだれが負担するのか、これが重要である。インデックス運用のファンドが負担したくないのなら、インデックス運用でない投資家、すなわちアクティブ運用におんぶに抱っことなる。しかし、アクティブ運用側からすると、コストのすべてを負担しないといけないのなら、「アクティブ運用なんて、やーめた」と言いたいはずだ。
それで、アクティブが消滅すればどうなるのか。道路に100万円の札束がごろごろ落ちていたとしても、「ありえへん、幻想や」と、誰も拾わない夢のような世界が実現してしまうだけである。
現在の日本の自称プロは、インデックス運用と議決権行使のためのコストを整合的に考える能力がない。というか、表面的なお勉強だけでは整合的に考えられないのだろう。
整合的に考えるのなら、2つの方法がある。1つは、議決権行使のための調査はアクティブな銘柄選択行為そのもののコアなので、「そんな無駄な調査は放棄する」「よって議決権行使もしない」ことである。もう1つは、インデックス運用といえども議決権行使は必要だと判断し、調査のためのコストを支払うことである。
以上を、ガバナンスに関する有識者、H氏と意見交換して、「へえー、同じように考えていたんや、灯台下暗し」「これからは孤軍奮闘やなくて共闘かな」と大笑いした次第である。
2015/07/30