川北英隆のブログ

中国は真の大国になれるか-1

中国が目指す方向は明確である。「中華」として世界の中心に咲くことである。政治的な力について議論しないとして、経済的には、元という通貨を世界通貨にまで高め、現在のドルの地位を奪うことである。
世界の通貨となれば、さまざまな特権が手に入る。
たとえば、元という世界通貨を誰もが欲しがるため、元の供給量をコントロールすることで、世界経済の近未来を左右できる。日銀が金融政策によって日本経済の近未来を左右しているのと同様の役割を、中国の中央銀行が世界経済に対して担えることを意味する。
また、中国が多少の経済的苦境に陥ったとしても、中国という国全体が売られることは避けられる。アメリカが財政も貿易収支も赤字であるのに、ギリシャ的に売られないのは、ドルを売りアメリカを売ったとしても、ドル売りで手に入った資金を振り向ける先に乏しいからである。極論すれば、ドルを売って、どの通貨を貿易の決済のために持っておくのかと問われれば、現在の世界では「ドルを持たない」という選択肢がない。だから、ドルを売っても、いずれドルを持つ状態に戻ってしまう。
それでは、現在の元がドルにとって代われるのか。今の中国では、元の売買はもちろん、金利の水準も規制されている。しかも今回、株価に対する強い統制が加わった。主要な銀行には中国政府の資本が入っている。以上からすれば、元を持っていたとしても、その元の値打ちが急変してしまうリスクと背中合わせと思わざるをえない。つまり、安心して元を持てない。
もう少し現実に沿った議論をすれば、元の価値はドルに連動している。ドルに対して多少の変動が許容されているものの、その変動幅が、中国経済の都合により政策的に大きく変更されるリスクがある。今のところ、中国経済の成長期待が強いため、変動幅の撤廃は元高を示唆していると解釈されている。しかし、この解釈はどこまで本当だろうか。次に(明日にでも)、この点を考えてみたい。

2015/08/06


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