一世を風靡したいわゆる村上ファンドが復活している。当人の村上世彰氏はシンガポールで悠然と暮らしているとのこと。その村上ファンドがC&Iホールディングスとして復活し、黒田電気に挑戦した。
今日8/21、黒田電気は臨時株主総会を開催し、新村上ファンドから出された「村上世彰氏ら4人を社外取締役にするように」との提案の可否を諮り、否決した。反対が60%だったと報じられている。村上氏側は黒田電気の16.1%、海外株主が43.5%保有しているから、海外株主の賛成票は最大で半分程度との計算になる。
新村上ファンドの株主提案に関して、議決権行使の助言会社、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は賛成を推奨していた。「経営の変革、保有現金の株主還元」を賛成の理由としている。一方、同じ助言会社のグラスルイスは反対を推奨した。「利益の全額を株主還元することへの疑問」を反対の理由としていた。
この黒田電気の臨時株主総会に関してブルームバーグから意見を求められた。記事は次にある。コメントの一部が使われている。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTDBV96JTSEA01.html
そこで、新村上ファンドに関する僕の意見を書いておきたい。
第一に、記事にもあるように、(ルール違反を起こさないとの前提において)いろんな投資家が登場する市場は健全である。数年前、「村上ファンドが懐かしい」「そのようなファンドの再登場が待たれる」と書いたか言ったことがある。公的年金をはじめ、インデックスファンドが横行し、その運用方法の本質も知らずに株主権を主張する素人的発言に閉口していた頃である。それはともかく、村上風ファンドに狙われないためには企業側としても規律正しくしないといけない。東芝が反面教師だし、かつて村上ファンドの標的となった企業もいい加減な経営しかしていなかった。詳しくは『株式・債券投資の実証的分析』で述べた。
第二に、今回、新村上ファンドが負けたのかといえば、そうでもない。黒田電気は大幅増配の方針を固めているから、ファンドの要求が通っている。たとえこのまま村上ファンドが株式を保有し続けたとしてもそれなりの成果だろう(ファンドとして満足かどうかは知らない)。
第三に、これは村上ファンドとISSへの批判であるが、今回の株主提案は古すぎる。黒田電気という企業が何で、どのように成長できるのか、もしくは成長見込みがないのか、つまり社外取締役として4人を送り込んだとして、経営をどのように変えるのかの具体的提案がないと、にわかに「そらそや」とは信じられないのである。黒田電気が本業で赤字垂れ流しの企業であればともかく、まずまずのROA(総資本利益率)を挙げている。その企業に「(提案を見るかぎり)無策」の「短期的利益」志向の強そうな株主兼経営者が入り、かつての村上ファンドのように企業解体を狙われたのでは元も子もないと、他人事ながら感じてしまう。この不安というか危惧を拭い去る提案がほしかった。
2015/08/21