中東やアフリカからの難民問題が深刻化している。というよりも、一枚の写真で深刻度合いが浮き彫りにされたと言うべきだろう。内乱、内戦によって住む場所を追われた住民がまずは陸続きのヨーロッパに向かっている。
難民が少数であれば人道的な観点からの受け入れが可能である。しかし現在の難民は年間数十万人の単位である。受け入れる側の寛容度と財政的裏付けが必要になってくる。さらに難民受け入れは、テロリストの受け入れと表裏一体である。
東ドイツが西ドイツに統合されたとき、その負担で西ドイツの経済に多大な影響が生じると懸念された。現実はその最悪の事態を回避した。北朝鮮が崩壊すれば韓国経済がダメージを被るのではないか、日本に難民が押し寄せるのではないかとの観測もある。
少し考えればわかるように、中東やアフリカからの難民問題は、東ドイツや北朝鮮と同じか、それ以上の負担を欧米に強いようとしている。東西のドイツ、朝鮮半島の問題は同一民族、同一言語間の出来事である。基本的な文化も共通点が多い。併合された国の(されるべき国の)国土も残されている。これに対して中東やアフリカの難民の場合、民族も言葉も宗教も文化も異なるうえ、住むべき国土は失われている。
東西冷戦が終わり、インターネットの時代になり、豊かな暮らしが待っていると信じられていたが、これは幻想だったようだ。経済発展によって国家間、国家内の格差が歴然たるものとなり、一方でのインターネットの発達によってその格差の情報を誰もが簡単に入手できるようになった。この現実が難民問題の背景にある。
格差問題にどう対処するのか、対処可能なのか、対処できないとすれば、世界はどちらに向かって動くのか、EU中心に分裂的な混乱を迎えるのか、真剣に考えるべき段階にさしかかったようである。
2015/09/14