安倍ちゃんが新第三の矢の構想を打ち出した。先日、(自他ともに今の日本の中核を担う)有識者と話していると、「矢」というよりも「的」との評価が下された。目標を掲げるのはいいが、その手段が問われる。
その「矢」の中に、希望出生率を1.8としたことには苦笑がもれた。明治維新後、とくに第二次世界大戦前の「産めよ殖やせよ」そのものである。ナチスもゲルマン民族による世界支配を狙ったが、その政策に相通じる。
もちろん、人口を増やすことが経済発展に結びつくことは当然であるが、そんなことを政府の指示でやらされるなんて、ラブホ的な業界以外、本音での賛成者はいないにちがいない。政府が出産に音頭をとるのなら、多夫多妻制を導入するとか、そんな奇抜なアイデアを提唱すべきだろう。
今日、某知識人に会いに行った。直感力、総合力にすぐれ、相場師でもある。そんな彼が言っていたのは、「今の社会は変わり、上の発言に反論する者が皆無になってきた。(同様に)政府が社会を指導するいびつさが目立っている」というものである。
かつて日本の高度成長は政府の指導で達成された。しかし、その成功は欧米という先達があったからである。現在、そんな目標とすべき先達はない。他方、日本政府に神がかった預言者がいるとは到底思えない。むしろ、大政翼賛的な風潮を浸透させようとの意図と、それを受け入れる素地が作られているように思えてならない。きわめて危険な日本社会の流れである。
2015/09/30