「何故、最近の京都に大型の起業がないのか」と投資家に質問された。この起業の乏しさは代表的京都企業が寂しそうに語っていた事実でもある。根は大学のあり方および、企業と大学との関係にあろう。
質問されるまで深く考えていなかったので、喋りながら考えたのは、1つは先週の講演会での年配者から指摘である。数十年も前、それこそ京都企業が伸び盛りの頃、京都大学の理系の研究室の研究費は融通無碍の側面があり、企業と一緒に新しい製品を大学の教員が作っていたらしい。その製品のいくつかが市場を席巻したとか。見ていないので、どこまで本当かはわからないものの、多分かつてはそうだったのだろう。教員もまた、特許などに関心が薄く、研究開発することそのものに喜びを感じていたようだ。
もう1つ、考えたのは、最近の新製品は情報処理技術(いわゆるIT)と密接不可分である。機械が機械の技術だけでは閉じない。ITにかぎらず、他分野との境界領域にも大きな可能性がある。これに対して、今までの大学の研究は横との連携に乏しかった。良く言えば、特定の分野を深掘りしている。悪く言えば重箱の隅をほじくっている。このため、画期的な製品の開発力が失われたのではないだろうか。
現在、大学は横の分野との連携を強めようとしている。また産業界との連携も高めようとしている。とすれば、京都大学と距離的にも感情的にも近い京都企業から、再び大型の起業が実現するかもしれない。そう期待したいものだ。
2015/11/18