株式持ち合いに関連して、もう一つ意見がある。投資家として企業の政策保有株の売却を提案したとして、それに対して納得できる反対理由や、解消に向けた進展がなければ、その企業を投資対象から外すべきだと考えている。
これは株主総会での議案に対して反対票を投じる場合も同じである。程度にもよるだろうが、少なくとも何年も続けて反対票を投じるような企業の株式を持つべきなのか。そんな企業の株式を保有するのは泣き寝入りと同じか、本音と建前が異なるか、言動が意識せずして一致しないアホな投資家か、そのいずれかでしかない。
年金の場合、運用を委託し、委託機関から株主総会での議決の結果を聴取しているわけだから、その聴取結果を受けて、投資ユニバース(潜在的に投資可能な企業群)を変える必要がある。つまり、ダメな企業をユニバースから除外すべきである。ユニバースを変えないのであれば、議決権の行使は、行使するだけが意義になってしまい、企業からすれば「そんな程度のもんなんや」と見下される。
要するに、株式の政策保有の解消を企業に提案することや、株主総会での会社提案に対する反対票は、「売却する」「絶対に保有しない」という最終手段に裏打ちされないかぎり、効果は薄いだろう。
株主からの提案に対して議論には応じるが、内心は絶対に従わないという企業の態度は、まさに慇懃無礼でしかない。それなら、最初から会わないと、きっぱり宣言してくれた方が投資家にとって時間の無駄にならない。では、何が何でも従わない企業の株式を、いわば片思いのまま延々保有するのだろうか。
ここに、企業と対話するのはアナリストであり、売買の判断をするのはファンドマネジャー、だから片思いだという事実が伝わらず、いつまでも投資家が企業に貢ぐ状態が続くという、縦割り組織の弊害の一端も見受けられる。同時に、いつか片思いが相思相愛になるのではとの一縷の望みを捨てきれないという、広義の政策保有に投資家として陥っているような気がする。
2015/12/03