21日の日経の朝刊、3面に経済に関する愚問が大きく掲載されていた。「経済統計 なぜブレる」という設問である。「アホなこっちゃね」と思う。日経の記者も本音は僕と同じようで、正解が最後に書かれていた。
愚問が起きたきっかけは、今年7-9月期の実質経済成長率が速報値で年率マイナス0.8%だったのに、その後に公表された改定値がプラス1.0%になったことにある。マイナスだったのがプラスになった、政府は何をボヤボヤしてるのかという騒ぎである。
この愚問に対して何が正解かと言えば(愚問に対する正解なんて、適切でない表現だが)、日経の表現を引用しておくと、「成長率がゼロ付近で推移しているため改定幅が小さくてもプラスとマイナスが逆転しやすく、修正後の印象が大きく変わりがち」となる。
統計はほとんど全部がそうだと考えていいのだが、数字をまとめるうえで推定作業が入っている。全部を調べきれないからである。その推計部分に誤差が紛れ込む。逆に、全部を調べられる統計、代表が日銀のお金に関する統計だが、そこにはほとんどに誤差がない(計算間違いがありうる程度である)。
誤差に戻ると、全体に対する誤差の大きさが問題になる。経済成長率に関して言えば、成長率が高いのなら誤差は気にならない。しかし、実際の成長率が低くなり、たとえばゼロ成長になれば、少しの誤差が生じたとしてもその誤差がプラスの大きさかマイナスの大きさかにより、ある時の統計値はプラス成長、ある時の統計値はマイナス成長になってしまう。これだけのことである。
では、どういう推定をしているので誤差が生じるのか。この点は21日の日経にある程度書いてあるので、ここでは書かない。そもそも、すべてを述べることは不可能である。
愚問を指摘したついでに、「エコノミストの仕事は大変や」と指摘しておきたい。成長率の予測はエコノミストの桧舞台である。でも、その桧舞台(正確には桧舞台の見え方)がぐらぐらしているから、公表値がマイナスなのにプラスと予想したり、プラスなのにマイナスと予想したりで、ずっこけてしまう。プラスとマイナスの部分を外すと、「しょうもない予想」と批判される。因果な商売だと、心からお悔やみ申し上げたい。
2015/12/23