年末年始の新聞を整理していると、移民、難民を受け入れることに賛成だという論調が掲載されていた。理想論はそうだと思う。留学生と喋っていると面白い。文化の多様性がわかる。しかし、である。
現実に外国人が隣に住んでいる生活を日本人は好むのだろうか。仲良く一緒に暮らせるのだろうか。一方の外国人はどうなのか。
大学の教員は留学生との接点が多い。だから、外国人を受け入れて何の問題もないと考える。しかし、留学生は(不法就労を目指していないかぎり)教養の高い外国人である。一般の外国人と同列に扱えない。しかも、多くは本国での所得水準も高い。日本で就職すると、それなりの企業に入れる。この点でも一般の外国人ではない。
一方、移民受け入れ賛成派の多い企業人は外国人を労働力としか見ていない。極論すれば、安ければいいのである。受け入れた外国人が労働を終えてどのように生活していようが無関心なのだろう。
以上からすると、学者や企業人が外国人の受け入れに賛成したとしても、それは一面しか見ていない議論だ。そう考えて大きな間違いはないだろう。日本人として思い出さないといけないのは、近代の日本が中国や朝鮮半島出身の外国人とうまく一緒に暮らせたのかということである。今の歴史の授業が何を教えているのかは知らないが。
僕の個人的経験からすると、小学校に韓国か北朝鮮かは定かでないが、外国人がいた。正確には、誰とはなしに日本人ではないと教えられた。「だから友達になってはいけない」という雰囲気である。食べ物、とくにニンニクの臭いに対する差別もあったようだ。今ではキムチは美味いと思うが、当時は食べてはいけない食べ物だったのか、家で出てくることはなかった。
日本は多民族国家ではないものの、元をただせばいろんな地域から来た人々の混血であり、大陸との交流も頻繁だったはずなのだが、江戸時代の鎖国により、「日本人」が確立したのかもしれない。この「日本人」意識が他の民族との区別、言い方を変えると差別を生んでいる。
多民族に慣れているヨーロッパでさえ難民問題に揺れている。日本が移民や難民を受け入れることで社会的に何が生じうるのか、まずは真剣に考えないといけない。その上で積極的な受け入れの是非を議論すべきである。
2016/01/26