昨年末から今年の正月にかけてオマーンを訪問した。一昨年、イエメンはソコトラ島の帰り、オマーンのごく近くまで行った。その時、「次はオマーンの山かな」と思った。というのも、立派な山があることをかねてから知っていたので。
オマーンがどこにあるのか。アラビア半島が北東に突き出した角、ペルシャ湾の入口にある。少し大きめの地図を見るとよくわかるが、オマーンには飛び地があり、その飛び地がペルシャ湾の入口を抑えている。すぐ向かいはイランである。
かつてオマーンは海洋王国だった。乳香と奴隷貿易で栄えた。すっかり忘れられているが(と書いている僕自身も、何かで読んだ程度なのだが)、オマーンはアフリカのザンジバル、つまり今のタンザニアのインド洋の出口を支配していた。そこから奴隷をはじめとしてアフリカの財宝を運び、貿易財として大儲けしていたのである。アラビアンナイトには多くの黒人が登場するが、その黒人の多くはオマーンによって運ばれていたのだろう。
そのオマーンは今も王国である。首都はマスカットという。そのマスカットの港はかつての面影を残しており、港を守った砦がいくつも残っている。
もっとも、海洋王国としてのオマーンは寂れた。奴隷貿易がなくなり、帆船から蒸気船の時代になってマスカット港の寄港地としての意味が薄れ、またヨーロッパの海洋技術に負け、さらにはスエズ運河の完成によってすっかり忘れられた港になってしまった。
そのオマーン、現在は原油で潤っている。ペルシャ湾岸の国ほどではないが、それなりに原油を産出する。このため、税金なしの国ができあがったのだが、足下の原油価格の暴落は国の財政を揺るがしている。ここに、他のアラビア半島の国と同様、脆弱性がある。
それはともかく、そのオマーンには3000メートルの山脈が連なっている。その山がどんな姿をしているのか、非常に楽しみだった。結論は、期待に違わず楽しかった。
2016/01/26