友人の誘いで飲み会をした。共通の知り合いに予約を任せていたら、麻布十番の店「いと正」を予約したとの連絡がきた。直前になって場所を把握するため検索すると、某サイトで3点だった。
しかも精進料理とのことなので、「どういう店なんや」と楽しみだった。精進料理といえば、七面山を歩いたとき、お寺で「腹減るな」と思いつつも、仕方なしに食べたきりであるし、「そんな変な店のはずがない」との確信に近いものがあったとはいえ、今まで経験したジャンルとは異なっていたので、不安がなかったといえば嘘だろう。
「いと正」の料理と酒は飛騨高山の産である。料理はコースだった。日本の野菜と、その加工料理で構成された納得の逸品が続く。味は「美味い」に尽きるだろう。当然ながら肉や魚がない。しかし、料理として仕上がった野菜類だけで満足する。
酒はというと、僕はビールで通していた。締めが間近に迫った時点で、飛騨の日本酒を常温で飲んでみたところ、なかなかだった。
料理が終わってしばらく、美味かったなと思いながら、知人と店主の話を聞いていたら、「えっ、ミシュランの星が1つ降りたの」と理解した。その値打ちは十分ある(ミシュランは後付けやという僕の評価からすると、美味いから、それをミシュランも評価したのだということになる)。だから、最近では海外からの客が多いらしい。
「じゃあ、何でや」と思うのは、最初示したように、某サイトの料理紹介の評価で「いと正」は5点満点の3点だということである。この点数の水準は、素人が作った田舎料理に対するものでしかない。かつて、今の京都の家の近くに「素人料理 田舎」の看板を掲げていた店を彷彿とさせる。「看板で大笑いした店と同じレベルなんかいな」と、もう一度笑える。
一般サイトの点数はいい加減である。マック類に慣れ親しんだ世代と、正統派の日本式出汁料理の世代とでは、料理が美味いかどうかの評価基準の差がきわめて大きい。だから、サイトの点数を信じてしまうだけなんて、碌なことがない。画一的な評価と、それを拠り所とした行動ほど怖いものがないというのが、今日の教訓だった。
2016/02/18