日本経済の特色は、アメリカとの対比でいうと、大企業が潰れないことだ。かつては潰れていた。しかし、ダイエーが生き残り、シャープも東芝も生き残りそうである。これは喜ぶべきことなのか。
潰れそうになった企業に勤めていた者からすれば、潰れないのは良いことのように思える。しかし、実質的に潰れた日本長期信用銀行の知り合い達に言わせると、潰れて良かったらしい。潰れたからこそ、潜在的な能力を発揮できる場が得られたのが、良かった理由である。
役所よりや役所的な大企業で働き続けるよりは、潰れた方がいい。さらに、生半可に他の企業に支えられたり、飲み込まれたりすれば、不自由極まりない。新天地を見つけた方がいいに決まっていると、僕なんかは思う。
もっと前向きに考えれば、潰れる、潰れないにかかわらず、すばらしい新天地を目指して日頃から研鑽を積むべきだろう。特定企業の偏った社風にどっぷり浸かり、そんな村社会で一生を過ごすなんて、9割以上の者は望まないはずだ。
このように考えれば、企業が潰れることは、またその前提で従業員が必死に研鑽を積みながら働くことは、株式投資家からすると理想に近い姿である。ほぼ確実に日本企業の生産性が上がる。とすれば、企業は儲かり、株かも上がる。
株価に対する効果はこれだけではない。企業が潰れそうで潰れないため、ゾンビがたくさんできてしまう。このゾンビは元気な企業の足を引っ張る。つまり、ゾンビと安売り競争をさせられてしまうわけである。そこで、ゾンビと戦うため、もしくは忌み嫌うべきゾンビを作らないため、企業としては特殊な作戦が必要になる。日本電産がいみじくも京大の講義で言っていたように、相手と徹底的に戦って潰してしまうか、飲み込んでしまうことになる。
しかし、現実にゾンビがいる。そんなゾンビを作って喜んでいる者がいるはずである。それは誰かと言えば、明らかに政治家である。潰れるべき企業が潰れず、従業員がそのまま雇用されれば、社会に変な波風が立たない。従業員はそれまでの企業の社風に浸かり、半分寝たままである。そうすれば、政治家も安泰である。
投資家としてはもっと声高に、ダメな企業を潰し、ゾンビを作らない運動をすべきである。なお、冒頭に上げたシャープや東芝がゾンビになるかどうかは不明である。今後の経営者の心がけと能力次第だろう。
2016/02/23