グアテマラに行くと知人に話したところ、「危ないんと違うの」との忠告とも質問ともつかない発言が返ってきた。かつての中米の治安があまり良くなかったのは確かだ。麻薬や内乱の歴史でもある。
グアテマラでは1960年から96年まで内戦が続いたらしい。1959年のキューバ革命の波及である。アメリカの覇権政策と、米ソ間の冷戦の影響もある。中米はアメリカの裏庭というか、カリブ海はアメリカの懐でもあるから、様々な思惑と力が働き、その結果が中米を不幸に巻き込んだ。
そんなグアテマラの首都、グアテマラシティは世界一治安の悪い都市とも言われてきたらしい。殺人の被害者数は(って変な表現かな、年間殺される数は)5000人とも。このため、グアテマラに入った最初の夜は市内の高級ホテルを使った。セキュリティがしっかりしているとの理由である。海外からの旅行者は、郊外で宿泊し、日中にグアテマラシティに出てくることも多いとか。車に乗って風景を眺めていると、大きな家の塀は鉄条網が張り巡らされている。工場や銀行の前にはライフルを持った警備員がいる。そんな国である。
しかし、グアテマラシティでの犯罪は単発的なものでしかない。イラクやシリアなど、中東周辺国で展開されている組織だった無差別テロとは完全に異質である。その無差別テロがヨーロッパにも波及している。
旅行中、ブリュッセルでテロが起きたのは皮肉だった。グアテマラシティの怒りだったのかもしれない。「今、最も危険な都市はパリやし、ブリュッセルやで」と。いずれにせよ、グアテマラシティの危険度はかわいい範囲と思えてならない。
そのグアテマラ、郊外に行けば平和が満ちている。適度に雨が降る地域だから、農業で十分生活できる。金銭的な収入を得ようとすれば大変だろうが、それさえ高望みしなければ、最低限の生活はできる。だから、危険度が極端に高まることはないのだろう。これが中東を中心とする乾燥地域との大きな差だと思える。
2016/03/29