川北英隆のブログ

GPIFの運用実績の公表に関して

国会で年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度の運用実績の公表日をめぐり、議論があったそうな。今年の発表が7/29となったので、損失を隠しているのではないかと野党が追求している。
客観的に言えば、損失を隠しているわけでない。隠したとしても、GPIFのポートフォリオからおおよその損失額を推計するのは容易である。
問題にするとすれば、「何で、そんな計算がとろいのか」「足し算、引き算さえできないのでは」という点だろう。金融資産の時価は少なくとも翌日に把握できる。把握できないとすれば、それは運用機関の怠慢である。
つまり、決算期末の3/31から4ヶ月もかかって決算をし、発表するのが最大の問題だろう。そんなことだから、世界の流れについていけない。上場している金融機関であれば、日本でさえ1ヶ月前後で決算を公表している。
要するに、民間に「すばやく決算を公表すべき」と要請しているのに、公的機関が4ヶ月もの猶予をもらっているのは、明らかな官民格差であり、怠慢そのものである。GPIFが悪いのか、監督官庁が悪いのか、それとも政策的な意図が入っているのか、どれかだろう(ほとんど理由は見えているが)。この怠慢というか故意を、野党としては追及すべきだった。
もう一点、年金の資産運用が市場環境に大きく揺らされるのは当然である。たった1年間の成果で判断すべきでないのは当然である。数年間の運用実績を確認し、運用の巧拙を判断しないといけない。しかし、今回の損失に関しては問題もある。公的年金の基本ポートフォリオが政策として変更され、株式偏重となった事実である。
GPIFは2014年10月末に内外株式のウエイトを上げると公表した。国内株式については、それまでの12%から25%にした。このウエイト引き上げによる損益への影響を計算し、評価するのが筋である。さらに、GPIFのポートフォリオ変更が他の公的年金にも波及したから、GPIFとしての責任は見かけ以上に大きい。これらの点を野党として追求するのが本筋である。
要するに、野党も与党も、株式市場とそれに関する情報公開に関して知識不足ではないのか。もう少し国会議員たるもの、勉強すべきだろう。

2016/04/09


トップへ戻る