本当にそう思っている。これまで何回かシャープのことを書いたが、論調に変化はない。シャープとして、世界企業になるチャンスは何度かあったようだ。しかし、経営者の発想にシャープさが欠如した。
産業の歴史の最先端には、ほとんどのように先進国がある。家電の歴史の先進国は欧米である。GEに家電部門がもはやないのは、最先端企業の証である。付加価値の低い、労働集約的な産業は、遠の昔、彼らから見て後進国にくれてしまっている。
家電が事業として成立するためには、安い労働力を求めて世界に打って出るか、徹底して自動化を進めるかしかない。しかし、これらの工夫をしても、過当競争に巻き込まれるだけなのだろう。それよりも、より付加価値の高い事業に資源を振り向けたほうが効率的だとの判断があるように思える。だから、家電という事業に最先端企業は執着しなかった。
テレビやパソコンのような、部品さえあれば子供でも組み立てられる製品を作ったところで、「それがナンボのもんや」である。
株式投資と同じで、切り捨てる、損切りする、そんな決断力が求められている。とはいえ、切り捨てるには「忍びない」との感情が出てくるだろう。そのとき、経営陣が過去の歴史に深く関わっていないのなら、決断が容易になる。見方を変えると、経営者の市場ができていて、そこから有能な外部人材を引っ張り込めることが重要になる。過去のしがらみに囚われることがなくなる。
ニュースの見出しだけを見ていると、「家電の名門、シャープが台湾の軍門に下って悲しい」との風潮が目立つ。でも、それが時代の流れである。感傷に浸っていては、次の競争にも負けてしまうだろう。東芝にしても、むしろ医療機器部門だけを残し、他を切り捨てる方策だってあったのではないかと思ってしまう。いずれにせよ、過去は過去、未来の繁栄とは無縁である。
2016/04/04