昆明を歩いている時、「ここは雲南、雲南白薬の故郷や」と思い出した。そこで急いでドラッグストアを探し、雲南白薬を探し当てて購入した。「雲南白薬酊」(写真)とあるから、チンキ状の塗り薬である。18.7元だった。
雲南白薬とは何か。中国で「国家一級特許、文化財」とされる漢方薬である。これは中国からの留学生の受け売りだが。文化財であり、中国国内では永久特許権を得ている。逆に、成分を開示する必要がない。このため、薬として海外に輸出できない。日本でもネットで売っているが(アマゾン、楽天では、ざっと見たかぎり出てこない)、大々的に売ると薬事法上、どうなるのか。
雲南白薬は止血剤、活血剤である。主成分は田七人参(中国南部に生え、朝鮮人参と同族)。元々は飲み薬だったが、現在では、塗り薬、湿布、歯磨き(ヒット商品)にも加工されている。止血効果は抜群との研究報告も見つかった(近畿大学医学部附属病院)。
ホテルに戻り、箱に書いてある中国語を見ていて(読めるはずがないから)気になったのが、成分表示にある「草烏」の文字だった。それ以外の成分は国家秘密につき、省略とある。「烏」とあるのは、「烏頭(うず)」に近い種類、つまりトリカブトの類ではないのか。
ネットで調べると、2013年2月、中国政府は雲南白薬に対して草烏を含むことを開示するようにと指示したそうである。ついでに、中国政府の調査では重い副作用は出ていない、調合によって毒性がかなり弱まるとも書いてあった。
http://www.cjpi.org.cn/News_View.asp?NewsID=3646
買った雲南白薬酊もチンキだから飲める。とはいえ、そういうのを飲む趣味はないから、もっぱら肩こり用に塗っている。塗るとぽかぽかする。独特の匂いがあり、それが鼻に入って風邪にもいいようだ。
もう1つ書くと、留学生から雲南白薬の名を教えてもらった時、「タイガーバームみたいなもん」と質問したところ、逆に「タイガーバームって何」と聞き返された。中国では虫刺されや傷口の止血にも雲南白薬を使うらしい。恐るべき文化の差である。タイガーバームと雲南白薬は似もせず、最初の薬効も別物だが。
2016/05/28