川北英隆のブログ

出口なしの国債と日銀

「出口なし」という小説があった。小説というよりは寓話というほうが適切だろう。作者は哲学者として有名な(今はどの程度有名かは知らないが)、サルトルである。今の政府と日銀はまさに出口なしである。
日銀は毎年80兆円の資金供給を続けている。講演会用にデータを集めていると、現在、日銀は429兆円の資産を保有している。そのうち374兆円が国債である。日本の毎年の実力(国内総生産、GDP)が500兆円だから、1年後に日銀の資産総額がGDPに接近する。そのうち国債は1.5年後にGDPを超える。
これが何を意味するのか、過去に経験しなかっただけに、誰にも予測できない。
とはいえ頭に置くべき数値は、現在の日本政府(国)の税収が、景気の浮上した今年度の予算でも60兆円少しだということである。国債発行残高が1000兆円に達しているから、国が税収に1銭も手を付けなかったとしても、現在ある国債の返済に17年かかる。日銀が保有する国債だけでも、現時点ですでに7年近くを要する。
現実問題として、政府が職員を雇っていること、社会保障費を支払っていること、そもそも現在は支出超過であること、これらを総合的に考えると、国債をゼロにすることはもちろん、日銀保有分の解消でさえ「ほぼ絶望的」「出口なし」に近い。日銀保有分の解消がありうるとすれば、国債の金利水準が大きく上昇した時だろう。
思うに、日銀は政府の走狗と化した。当然、当初のシナリオにあっただろう。だから「出口なんて今は考えていない」との発言になったのだと思う。そんな日銀の職員の内心は忸怩たるものと察する。ついでに勤めていなくて良かったと思う。

2016/06/21


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