東京エレクトロンの東さん、元社長と議論する機会があった。東さんについて、僕は非常に優れた経営者だと思っている。外部の意見をしっかりと聞くし、一方で自分の頭で考え、行動している。
その東さんと久しぶりに話していて、「そうか」と思ったことがある。
東京エレクトロンの仕事がまさにそうなのだが、半導体メーカーと製造装置を開発するのは、お互いの共同作業になる、その作業プロセスにおいて、従来の方法の問題点を相手から指摘され、すぐにその解決策を提示するのでは、利益率は低い。そうではなく、問題点を自分達で見つけ、その見つけた問題点に関して自ら解決策を提示することが高い利益率に結びつくとのことだった。問題点まで見つけてもらったのなら、相手企業は少々開発した機械が高くとも、文句の出しようがない。
その言葉からすぐに思い出したのは、学生が論文を書くときに、「何をテーマにしたらええんでしょうか」と質問される場面である。それに対して、「そんなん自分で考えんと」「日頃の問題意識か、テーマを探り当てるのが論文で、テーマが確定できれば論文の半分は完成したようなもんや」と指導している。
大学生の頃には、幅広く社会や科学に対する問題意識を持ち、それを自分で考えないといけない。考えるためには知識レベルを高めることが求められる。将来はともかく、現在の人工頭脳(AI)に人間が勝っているのは、問題設定を自分自身でできることである。それを放棄したのでは、今の拙いAIと同じか、人間の方が詰め込んだ知識レベルにおいて劣る分だけ「機械以下」である。
ということで、さすがに東京エレクトロンの東元社長だと感じた。こんな企業や社長が次々に出てこなければいけない。経済団体を組み、(50年近くも前になった)高度成長時代よろしく単に政治に対する圧力団体の片棒を担ぎ、政府におねだりするだけなら、日本企業の先は知れている。
2016/06/22