最近目立つのがオーナー系企業(ファミリービジネス)でのお家騒動ある。大塚家具、セブン&アイ、セコム、大戸屋、出光興産などを指摘できる。結論として、規模の大小を問わず、創業家強しの感がある。
このうち、セブン&アイとセコムの業績は今のところ順調に伸びている。ともに、取締役候補者を選定するための委員会(指名・報酬委員会)を設けているが、会社側が任意で設置したものであり、会社法上の権限があるわけでない。とはいえ両社の場合、この委員会が主要な舞台となった。
取締役会でいきなり議論するよりも、委員会という少人数の場での議論のほうが情報のコントロールが容易である。創業家として、指名・報酬委員会は影響力を維持する場として便利なのだろう。そう勘ぐっている。もちろん、委員会に創業家のメンバーが入っているか、もしくは腹心がいないと、議論の主導権を握れない。この点、オーナー系企業では創業者が何らかの求心力を有していることが多いので、主導権を握れる可能性が高い。
セブン&アイとセコムについて、首をはねられたトップの何が創業家の意に沿わなかったのか不明な点が多い。一方でお家騒動は将来に禍根を残す。雇われ経営者や従業員のやる気を落としてしまう危険性が高い。また、創業家に対するイエスマンを増やしてしまいかねない。両社について、今後の業績を注意深く分析する必要性が高い。
一方、出光興産は深刻である。石油業界全体が、人口減少、高齢化、若者の車離れ、車の小型化・燃費向上の波に襲われている。将来は電気自動車の問題がある。以上からすると、出光と昭和シェルとの経営統合は、それが実現したとしても効果がどの程度が疑問ではあるものの、必然に近い。
出光の場合、セブン&アイとセコムのような指名・報酬委員会を持たない。その代わり、創業家が1/3以上の株式を保有しているため、株主総会での重要決議事項(2/3以上の賛成票が必要な事項)に拒否権を発動できる。やはり、功成り名遂げた経営者と一族はコントロール権を確保しているわけだ。
今回の統合案に対して創業家が反対の意向を示したとか。どうするつもりなのか。目先の利益というか面子というか、それと、長期的な利益との比較をどの程度行ったのだろうか。外から眺めるかぎり、創業家の暴走としか思えない。
出光の場合、今回のお家騒動の結末が依然として見えない。とはいえ、結末のいかんによらず、ごたごたは業績にマイナスだろう。少なくとも、もっと早い段階で創業家の意向を示すべきだった。
一般論として、株式市場にとって、オーナー系企業(ファミリービジネス)のパフォーマンスが良好との分析結果が多い。それはリーダーが明確であり、企業の目標がきちんと決められるからである。
一方、オーナー系企業では経営者が独善的になり、暴走するリスクもある。社外取締役が暴走に対してブレーキ役を果たすべきだとの意見もあるが、通常は多勢に無勢である。創業家がコントロール権を放棄していれば別だろうが。
現実は、上で示した3事例の場合、創業家がコントロール権を保持している。とすれば、いざという場合、社外取締役は有名無実化する。一般の論調は、とくにセブン&アイの場合、社外取締役制度が機能したとするが、実態を見誤っているとしか思えない。
2016/07/06