川北英隆のブログ

人口が経済力に寄与しない事例

先進国の経済力の向上が人口の増加率に左右されていそうだと7/8に書いた。では、人口の増加が必然的に経済力の向上をもたらすのだろうか。世の中、そこまで単純ではない。
実はこの問題、かなり以前から関心を持っていた。そこで、簡単な分析をしてまとめてみたことがある。証券アナリストジャーナル2013年9月向けに書いた「人口と経済成長?アフリカへの期待と制約」である。
その当時、我らの安倍ちゃんがアフリカ経済に注目したいと、プロパガンダをぶちあげていた。2013年6月、第5回アフリカ開発会議が横浜で開催され、「21世紀半ばにかけ、アフリカは間違いなく成長の中心になる。そこに今、投資しないでいつするのか」と述べたそうな。
その後、アフリカはどうなったのか。政府は話題にしない。新聞で目立つのはサハラ砂漠周辺部での紛争である。アフリカで一番発展しているはずの南アフリカでさえ経済が停滞してしまった。
正確を期すために書いておくと、アフリカの人口は爆発している。最近年での人口増加率は2.55%である。10年経つと1.3倍になる。この増加率は世界で最大である。
アフリカを旅行してみよう。そこら中に子供がいる。車を停めると子供が集まってくる。何かもらえると思うのだろう。しかし、その時に冷静になって考えると、「今日は平日やん」となる。平日の昼間に子供が、道路めがけて走ってきて、物をねだってどうするのか。学校で勉強する時間ではないのか。
潜在的な労働力が実際に労働力として投入され、経済発展をもたらすには、一定水準以上の教育が必要である。国の政策を考えるベースも教育である。子供を教育するためのインフラがどの程度整備されているのか、それが将来の教育水準の目安となる。証券アナリストジャーナルにも、そのようなことを書いた。
一方、現時点で達成された教育の目安は識字率である。学生時代、スペインで、スペイン語で書かれた文章を見せながら道を尋ねたことがある。しかし、理解されなかった。今年、グアテマラの田舎でビールの値段を紙に書いてもらおうとしたが、数字が書けないらしかった。これらはいずれも初老の女性の例だが、今でも若者の識字率が9割未満という国がアフリカで目立つ(世界国勢図会)。
日本の政治家は海外に行き、首都で会議をして、そのまま帰ってくる。せめて首都郊外にまで出向かないと、その国の本当の姿は見えない。結果として、政策を誤るだろう。

2016/07/10


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