オムロンの執行役員常務、安藤聡さんとの対談の続きである。当日、配当の話になった。オムロンが約束している配当性向(利益から配当として支払う割合)は30%とのこと。ほぼ市場の平均値である。
この目標値に対して投資家(アナリスト)から、「市場の平均値ではなく、もっと上げれば」との提案がよくあるらしい。これに対して安藤さんは、「では何%にしたらいいのか」と逆に質問するそうだ。と、答えが返ってこないとのことである。では、望ましい配当性向について、どのように考えるべきなのか。
企業は税引き後の利益から配当する。配当しない部分は内部留保となる。この内部留保に何の意味があるのか。将来、企業が成長するための元手だと理論的には説明される。
成長のため、企業は外部から資金を調達してもいい。しかし、この調達にはいろんな制約があるので、簡単なわけではない。それに、現在の株主からすれば、企業が成長のために外部から資金を調達すれば、その成長から得られる利益は自分たちのものとはならない。新たに成長のための資金を提供した投資家のものとなってしまう。
たとえば、企業が公募増資で成長のための資金を調達すればどうなるのか。現在の市場では、株式の価値が「希薄化する」というので、株価が下がるだろう。つまり、企業が将来に稼ぐことになる利益を、新規の株主に横取りされると市場は反応する。この反応を言い換えると、上で説明したことになる。
とするのなら、ある企業が成長するための投資機会をたくさん持っている場合、現在の利益を内部留保することも、株主にとっての利益となる。もっとも、「短期で勝負」と思っている投資家には、配当のほうが望ましいだろうが。
何回かブログでも書いてきたように、アメリカの著名企業で無配の企業がある。グーグル、アマゾン、フェイスブックが典型的である。これらの企業が儲かっていないわけでない。利益をすべて内部留保して、成長のために積極的に投資しているだけのことである。株価は驚くほど上がっている。
ということで、配当でどの程度の割合を株主に払うべきなのかは、企業によって異なる。配当だけを「ありがたい、ありがたい」と拝むのは、本来の株式投資家ではない。株価が値上がりしない日本市場においては「配当を拝むべき」なのかもしれないが。
2016/09/13