21日、日銀は従来の金融政策について「総括的な検証」を行い、消費者物価上昇率2%の目標を達成するための金融政策に変更を加えた。変更後は、「短期に加え、長期の金利をコントロールする」。評判はどうかというと、「悪い」である。
「悪い」との評判は、いくつかネットで見つけたコメントと、某所で議論した結果からである。もっとも、債券市場関係者の意見が大半だから、偏りがあるかもしれない。
21日当日、株式市場は上昇した。とはいえ、今日23日は反落している。為替市場も日銀が望む円安方向に動いた。しかし、数時間後、当日の欧米市場では円高になってしまい、今日の東京市場では出発点よりもかえって円高に振れてしまった。株式市場も為替市場も、当日の値動きは期待だけのものであり、「冷静に考えると期待外れ」だったのかもしれない。
何故、評判が悪いのか。
まず、「総括」が「物価上昇率2%が達成できなかった」言い訳だけで終わっている。こんな総括を口に出した瞬間、学生運動が盛んな頃なら、それこそ吊るし上げられるだろう。日銀のトップなら、学生運動の当時を知っているはずだし。この「吊し上げ」というのは僕の表現だが、このコメントを思いつかせたのは学者兼実務家の某氏であり、僕ではない。
次に、どうでもいいような点だが、ある意味で今回の政策変更を象徴するのは、「物価上昇率2%」の目標を「2%超」に変更し、「オーバーシュート型コミットメント」と表現したことである。修辞の力量の披露でもあるまいに、「超」のあるなしで政策の変更なのかという意見が強かった。つまり、「何年先の話をしているのだか分からへん」「もうちょっと現実が物価上昇に動いたら、その時に変更しろや」というのが大勢だった。
最も議論が集中したのは、短期金利については、従来と同様、マイナス0.1%の金利を適用し、新たに「10 年物国債金利が現状程度(ゼロ%程度)で推移するようする」という、「イールドカーブ・コントロール」政策である。今回の政策の目玉だろう。
しかし、この政策では、「現状に大きな変更はない」から、「銀行の収益を悪化させ、金融システムの不安定さを呼び込む」とされたこれまでのマイナス金利政策の欠点を拭い去れていない。さらに、短期と10年国債金利だけでなく、10年超を含めた各年限の金利を日銀はコントロールすると宣言しているものだから、「金利市場は死んでしまう」「統制金利と同じ」との評価を下さざるをえない。つまり(他国を批判するわけではないが)「中国未満」の、規模だけ大きな非資本主義国家に成り下がりかねない。
もう少し言えば、第二次世界大戦に突入する直前の日本の金融システムとますます似てしまう。国債が売られて金利上昇の兆しが見えれば、日銀が国債を徹底的に買い、10 年国債金利をゼロ%に留めるわけだから、お金が民間にじゃんじゃん撒かれることになる。政府の財政規律は無きに等しくなってしまう。まさにヘリコプターマネーの実現となりかねない。
そう思うと、「はぁー」とため息である。
2016/09/23