日銀が金融政策として新たに採用した「オーバーシュート型コミットメント」の深淵な意味について解説してもらった。過去、2%の物価上昇を達成できていない。その分を取り戻すまで、たとえば3%の物価上昇であっても認める。ここに政策の真意があると。
「でも、日銀が公表した文章だけを読んだかぎり、そんな真意は到底読み取れない」との感想が多かった。それとともに、前回(9/23)書いたように、「現時点で2%を2%超に変更するのは、えらく先の話で理解できない」との感想もあった。いずれも識者の感想だと書き加えておく。ちなみに、識者の発言なので、関西言葉にしていない。「何のこっちゃ」だが。
この政策、そもそも論からすると、本当に2%の物価上昇が可能なのか、これまで2%が達成できなかった真の理由は何なのか、これらの分析がないかぎり、「気合で2%の物価上昇を達成するんや」という言葉からは、「今は敗戦した第二次世界大戦中か」という錯覚に誘われてしまう。もちろん、精神的な部分を完全否定するものではない。「前向きさ」が重要なのは理解できるとして、「でも、それだけやないやろ」と思ってしまう。
現在の中国経済の大問題として、鉄や石炭などの過剰生産が指摘される。非効率的な業者がゾンビとして生き残っているから、安値競争が蔓延し、中国国内だけでなく世界的に悪影響を及ぼしている。
これと同じことが、小規模ながら日本でも生じている。雇用を優先して「企業を潰さない」政策が、ゾンビ企業を生み出し、安売り競争の原因となっている。この政策によって、短期的には雇用を守れるだろうが、長期的にはゾンビが徘徊している業界全体の収益力を損ない、全雇用者の賃金を抑制してしまうし、現実もそうである。
本当に必要な政策は、労働市場の活性化である。解雇されても、他社に雇用される市場の形成であり、解雇された者を再教育して再雇用を促す仕組みを作ることである。これなしに「気合だ」「気合が足りない」とまくし立てるのは、役人的な縦割り政策であり、視野の狭さだと言わざるをえない。
2016/09/27