川北英隆のブログ

アメリカ株への投資の勧め

今日付けで「アメリカ株への投資の勧め」という記事を某通信社に配信しておいた。定例の配信である。有料のものを優先しないと怒られるから、少し遅れたと思うが、その抜粋をアレンジし、掲載しておく。
一般の個人がなぜ海外株に投資しないのかと、20年以上前から不思議に思っている。今ではネット証券でアメリカ株などを安く売買できるようになった。僕自身、アメリカ株を買ったのは1990年頃だったかと思う。東証に上場していた企業である。
現在、アメリカ企業に関する情報は、たとえばNASDAQのサイトから簡単に手に入れられる。だから、日本とアメリカの間にそんなに大きな情報ギャップはない。
日本株とアメリカ株の差異は何なのか。
アメリカが勝っているのは個別企業の躍動感である。1980年代、日本はアメリカを馬鹿にしていた。アメリカの製造業が軒並み冴えなかったから、日本にしてみれば、近い将来は日本製品がアメリカ市場を席巻するとの勢いだった。現実はどうだったのか。自動車はともかくも、パソコンやスマホのOS(基本ソフト)に象徴されるように、アメリカのカウンターパンチを食らってしまった。
日本株の利点は為替リスクのないことである。とはいえ、債券投資ではないのだから、株式投資において為替リスクに神経質になるのは大袈裟過ぎる。それでも為替リスクをヘッジしたいとして、そのコストは株価変動と比較して大きくない。FXを使ってヘッジする手段だってある。
普通の投資家の場合、ある程度の分散投資が基本となる。そうだとすれば、海外投資にともなって海外通貨のポジションを作ることはごく普通の行動と考えていい。アメリカは経済的に良好であり、政治的にも(トランプが大統領になるリスクを除外すればだが)他の国よりも安定している。そんなアメリカドルのポジションは、長期的に望ましい。
公的年金の基本ポートフォリオでは、国内株と海外株の割合が等しい。その理由が何なのか、正しいのかと関係者にいつも質問している。世界市場に占める日本の時価総額は8%である。アメリカだけを取り上げても、その時価総額は日本の5倍近くある。公的年金だから、日本企業への多少の身びいきを含め、日本株投資に偏るのは仕方ない。とはいえ、海外株の割合が小さすぎる。
個人の資産形成にとって、海外株投資は望ましい。証券会社が、日本株と比較したアメリカ株への投資魅力を伝えないことは、金融庁が重点を置き始めたフィデューシャリー・デューティー(信認義務もしくは受託者責任)に反しているとさえ思っている。

2016/10/17


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