川北英隆のブログ

中前忠さんの講演を聞く

日経新聞の夕刊、十字路のコラムを受け持っておられる中前忠さん話を直接聞く機会があった。その中前さんと会ったのは多分30年ぶり近いのではないだろうか。
中前さんが大和証券に勤務されていた時に、その名前を知った。僕が東京証券部証券調査課に勤務していた時である。当時の部長、その後に社長になった伊藤助成さんが中前さんと親しくされていたと記憶している。伊藤さんは人物として大物だったから、対外的に幅広い人脈を持たれていた。その中の1人が中前さんだった。なお、中前さんは1986年に独立され、中前国際経済研究所を設立されている。
今日、大変久しぶりに中前さんと会い、伊藤さんのことを持ち出した。すると、中前さん曰く、当然伊藤さんが社長を退いてからのことだと思うが、箱根のゴルフ場で会って話をしたところ、伊藤さんは箱根の強羅に住んでいて、そこから会社に通うのだと言っていたとか。そんな、僕が秘書でもあるまいし、元社長の住居のことまで知っているわけがないから、「知らないけど、さすが」と正直に答えておいた。
それはともかく、中前さんの説では、トランプは大統領になるべくしてなったのだと。日本人のほとんどすべてがトランプに仰天したのが仰天ものだそうである。東京エレクトロンの前社長、東さんも、「選挙の1週間前にアメリカに出張し、友人たちに聞いたところでは、トランプの可能性が高いとの話だった」そうだ。日本のマスコミが状況の観察を誤ったのだろうとの結論である。これは僕の意見とも整合的である(11/17のブログ)。
中前さんの講演の主旨は、トランプが打ち出そうとしている政策は、これまでのアメリカを含む先進国の政策が行き詰っていたことからの結果であり、何も新しい政策ではないというものだった。だから、トランプの当選自身が混乱をもたらしているわけではないし、むしろ金利上昇と株高に見られるように歓迎されていると。ただし、現在の株価は理想買いの段階でしかなく、これから一本調子で株価が上昇するわけでもないとも。当然だろう。いずれにせよ、トランプの現実的な側面を解説してもらったと思う。
最後にトランプのリスクは、政策が思うような効果を生み出さない状況になった場合、トランプが平静を保てるかどうかだという。確かに、成功してきた者にとって、失敗の経験がどれだけあるのか。その時にどう対処し、その経験がどのように生かされるのか。評論家的に言えば、これが最大の見どころである。

2016/11/24


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