瓶割山から踏み跡をたどって西側に下りた。薮中では、6割り方は足元の落ち葉の様子や草の生え方などを見ている。残り2割は5m位先、2割は歩いている林全体の様子だろうか。そんな中、ふと10m位先を見ると茶色い塊があった。
その塊は丸まって寝ている様子だった。木の下、落ち葉の上だった。一瞬、小さい犬かと思った。しかし、そんなのが林の中で寝ているはずがない。「キツネか」と気づいた。相手も浅い眠りから覚め、こちらを見た。その顔つきは、鼻が犬よりも尖り、明らかにキツネだった。
「写真」と思い、首からぶら下げていたカメラを向けた。その瞬間、キツネが背中を向けて走り出し、林の中を駆け下ってしまった。残念ながら写真は撮れなかった。
山中でキツネを見た記憶はあまりない。タヌキもない。肉食系の動物を見たとすればイタチくらいか(クマもかな)。キツネやタヌキのそれらしい姿を瞬間見たように思わなくもないが、少なくともしっかりと確認できたのは今回が初めてである。
色はまさにアブラアゲの色である。体は小さく、普通のイヌよりも小柄だろうか。まだ大人になっていないのかもしれないが、そもそもイヌに比べると体がきゃしゃな(太っていない)せいもあるだろう。また、北海道のキタキツネに比べ、キツネ(ホンドキツネ)は少し小さいらしい。
瓶割山は新幹線のすぐ横の山といっていい。1kmは離れていない。東京に行った時に確認すると、大きく見える。そんな近くにキツネがいる。何を食べているのか。人家に餌をあさりに行くこともあるのかな。
キツネは人の生活に密接している。
子供の頃、母親の実家(里山の農家)に行くと、畑の横、少し土手になった箇所に穴があった。キツネの穴だと母親が言っていた。中学生時分になると、その土手がどこだったのか分からなくなり、ましてや穴は消えていた。キツネがいなくなったのだろう。
郡山に源九郎稲荷神社があり(稲荷神社として有名らしい)、そのお祭りにはイナリ寿司を作ってもらった。当時はご馳走だった。そもそもはキツネにも供えたのだろう。源九郎稲荷神社付近は、今では住宅地になっているが、昔は外堀に面していて、それこそキツネがいたと思う。ネズミを捕まえてくれただろう。堀や田のカエルも餌だったのだろう。
もう1つは小狐の歌である。「小狐こんこん、山の中」という歌が小学校の音楽の時間にあった。「紅葉のかんざし、つげのくし」である。ネットはすごくて、こんなしょうもない歌でも引っ掛かる。今回のキツネ、紅葉をかんざしにするのでなく、それを敷いて寝ていたが。
2016/12/10