川北英隆のブログ

日本の株価上昇は正しいのか

日本の株価が上昇している。アメリカもドイツも上昇しているから、世界的な経済の回復を反映した株価である。この点、問題はない。しかし、上昇のスピードを見なければならない。
そこで、日本、ドイツ、アメリカの株価収益率(PER)を比較してみた。そうすると、現時点でアメリカが17.9倍、日本が15.3倍、ドイツが13.7倍だった。夏頃までは、日本とドイツがともに14倍近くで、アメリカが約18倍だった。
ということは、アメリカとドイツは企業収益とともに株価が上昇したことになる。このため、PERに大きな変化がない。これに対し、日本だけが期待先行の状態にある(企業収益の向上以上に株価が上昇している)。このため、PERが目立って上昇た。
専門家の友人Oからは、日本の株価が高すぎる、カジノと一緒だとのメールが届いた。彼の最近はいつも弱気だから、割り引いて評価する必要があるものの、上で示したPERの比較からすると、あながち間違っているとは言えない。
思うに、日銀の金融政策が影響しているのだろう。
1つは、日銀自身がコンスタントに株式を購入していることである。それもEFT(上場投資信託)の形態での投資だから、良いも悪いも目をつむって買っている。これが株式市場の需給関係を良くしている。
もう1つは、消去法的に日本株を選ばせている。国債の利回りがゼロだから(多少プラスだったとしても値下がりすればたちまち吹っ飛んでしまう利回りだから)、株式の配当が魅力的に見えてしまう。かといって、海外の株式や債券には為替リスクがある。仕方なしに、日本株に投資資金の目が向いてしまう。
この2つは、いずれにしても日銀が演出したバブルと言える。
前者について、日銀は金融政策の一環として日本株式を買っているだけであり、「今が買い時、売り時」という純粋投資家としての判断をしているわけでない。日銀は買うだけだから、株価を釣り上げる要因になるし、株価を上げて景気を良くしよう、投資家の懐を豊かにしようとしていることは明々白々である。
後者についても、資金の流れを制限しているわけだから、株価の釣り上げ要因となりうる。もちろん、投資家としてきわめて合理的な判断と行動ができれば、株価はバブル的にならない。しかし、誰がそこまで合理的になれるのだろうか。偉いさんに当面の実現損益の多寡を問われるのなら、配当収入に魅力を感じてしまうのが人情だろう。もちろん、その配当収入に関して言うと、いつかこのブログで書いたように、電力会社の例はあるのだが、誰がそんなことを覚えているのだろう。
まとめれば、日本の株価水準は要注意である。ついでに書くと、日本経済はアメリカ次第なのだから、「ほんま、真剣に日本株に投資していいの」という疑問もある。

2016/12/21


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