少し古い記事だが、2/6日経朝刊の1面左に掲載されたコラム「市場の力学 個人投資家のナゼ」の見出しに「振り向けばいつも逆張り」とあった。強い違和感を覚えたので読んでみた。
このコラムの結論をまとめると、「逆張り以外の投資スタイル(多分、順張り)が個人にあっていいのでは」というものである。もちろんこの結論が間違いだとは言わない。しかし、いかにも逆張りが悪者だという書きぶりには、新聞社としての意図が濃厚だとしか思えない。
この記事のベースには、「今の日本の株価は高くないの」との思いがあるのだろう。行動ファイナンスの学者の意見を引用し、個人投資家は「ファンダメンタルズを信じていない」「自らの相場観を信じる『相場師』が多い」と書いているのは、個人投資家を見くびっているのではないだろうか。
現実を直視すると、日本市場において本当に長期投資で買える企業は限られている。証券アナリストジャーナル2017/1月号のフィデリティ投信・三瓶氏も同じ評価を下している。これを信じるのであれば、それ以外の企業の株式への投資は売ったり買ったりで十分である。つまり、この売ったり買ったりが生じるのは、個人投資家の責任ではなく、上場企業の責任である。実際、1990年から始まったバブル崩壊時に、個人投資家の逆張りが非常に大きな功を奏した。
そもそも、現時点の株価は平均的に高いのか、安いのか。客観的に見て、決して安いとは言えない。そうであるから、今この時、個人が売ることを非難するのは極めて恣意的であり、「株価は安い」と言っているのに等しい。また、逆張りを非難するのは、暗黙のうちに順張りの推奨、すなわち「株価が上がる時に買え」と主張することと同じである。
さらに言えば、市場には順張りの投資家こそ、掃いて捨てるほどいる。今では、個人投資家以外の投資家のほとんどがそうなってしまった。このため、市場の多様性を高めているのは、むしろ個人という逆張りを好む投資家である。
言い換えれば、個人投資家の逆張りは市場にとって伝家の宝刀である。個人投資家が逆張りを止めればどうなるのか。市場全体が大政翼賛的になる。この市場の事実について、記事は何も指摘していない。
いろいろ書いたが、2/6の逆張り批判のコラムは偏っている。この記事にめげず、個人投資家には、逆張りという冷静な投資行動を続けてもらいたいものだ。ただし、「この企業はいい」と思えたのなら、長期投資に徹してもらいたいとも思う。
2017/02/15