先日、神戸大学の忽那(くつな)氏の講演を聞いた。みずほ証券の寄附による特別講座と称し、関西企業を招いて毎年この時期に開催している。話はベンチャー企業を日本でも育てようというものだった。
裏を返せば、日本のベンチャー企業は発育不良である。忽那氏の資料にもあったし、このブログでも何回か書いた記憶があるのだが、アメリカのベンチャー企業の代表はグーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルである。これに対応しそうな日本企業はそれぞれ、ヤフー(出自はアメリカのヤフーだが)、ミクシィ、楽天、ソニーだとしていた。
株式市場での時価総額を比較すると、昨年4月時点で計算した資料では(現時点の計算もすぐにできるが、あまり意味がないのでやらない)、アメリカの4社が合計で192兆円、日本4社が8.8兆円である。
日本の企業規模はアメリカの1/20以下ということになる。この計算当時、東証第一部の時価総額が500兆円だったから、アメリカのベンチャー企業4社がいかに巨大であるか理解できるだろう。付け加えれば、アメリカ4社は現在、アメリカ市場のトップ10に入っている。こんな規模の大きな企業を「ベンチャー企業」なんて書くと怒られそうである。
何故、日本にはスケールの大きなベンチャー企業が登場しないのか。いろいろな理由があるものの、1つ大きなのは労働市場だろうと思っている。日本の学生は安定志向である。今でも、京都大学の学生の多くは銀行や保険会社に就職したいと考えている。「そんな、普通の銀行や保険会社に入ってどうするの(普通でない銀行や保険会社があるのに)」と、ゼミでは質問というか非難というか、そんな発言をしていた。「入ってもええけど、入社して数年は一流の能力を身に付けるように努力することやね」とも言った。
聞くところによると、アメリカでは大学の卒業者のトップクラスは起業を志すそうである。起業できないのは能力がない証拠であり、「かわいそうなヤツや」となる。また、起業して成功しなかったとしても、それが即マイナス点にもならないらしい。
もちろん成功するに越したことはない。成功し、その成功した企業を売り払い、次にまた新しく起業をする。こんな勲章を積み上げることがアメリカの出世物語である。
日本の状況は、このアメリカと完全に異なっている。(続く)
2017/02/18