毎日新聞の「水説」というコラムのコピーを見せてもらった。3/1、何面かは定かでないが、中村秀明という記者が書いている。グッドバンカーを訪問してインタビューした記事である。
この記事、是非読んでもらいたい。興味深いことが3つある。
1つは企業のトイレについて。証券アナリストジャーナルの、今年3月号の僕の原稿、「古くて新しい証券アナリストの役割」において言及したのと同じことが書いてある。僕はビルの価値についてであるが、コラムには企業の経営状態について、「トイレが一番正直」という意味のことが書かれている。
2つ目は、企業名が書かれていないものの、憶測するに東京電力のことである。グッドバンカーには先見の明があり、2010年春、東電の環境面での評価ランキングを落とした。ずさんな事故(小さな事故)が繰り返し起きていたからである。翌年に東日本大震災が起きたものの、グッドバンカーの評価ランキングの引き下げが、その投資助言を受けた投資家の損失を未然に防いだ。このタイミングはたまたまだろうが、重要なのは、「一事が万事」という事実である。トイレに基づく評価と相通じる。
3つ目は、これも企業名がないものの、東芝だろう。この企業の今に関して、僕として何もコメントできないので、新聞記事に書かれたことだけを伝えておく。東日本大震災による原発事故の2ヵ月後、その社の役員が「30年に一度の事故・・原発稼動のメリットをふまえると吸収できるコストだ」と公然と発言していた。グッドバンカーの担当者は「社会の要請が読めていない」と判断し、「投資対象として要注意」にした。
当時の経緯についてはよく覚えている。役員の発言を受け、グッドバンカーの担当者からメールで見解を聞かれた。グッドバンカーの顧問と言うかアドバイザーとなっている何人もが、そのメールに対して自らの意見を述べ、議論した。結論は新聞の通りである。
付言するのなら、グッドバンカーは2社についての最終判断を下す前に、同業他社からも意見を聞いている。この2社の場合、同業からも疑問符が呈せられた。やはりおかしかったようだ。
示唆が得られる。自分の会社(勤めている会社)を見るとき、他の会社と比べてみるのがいい。それも、陰の部分の対比である。トイレであり、事故があった時の対処である。同時に、同業他社、そうでなければ比較的近い会社の人間と意見交換するのがいい。自分の会社が異常なのか普通なのか、少なくともその程度の評価が下せる。
もっとも、聞いた相手が悪かった、ドングリの背比べでしかなかったという結末もありうるが。幅広い意見を集約するのが望ましい。
2017/03/03