今日、今年度最初の講義をした。農林中金バリューインベストメンツから寄附金をもらって開講している「企業価値創造と評価」の講義である。今年度で4回目(4年目)を迎える。
資料はこの川北のホームページにアップしている。他のサイトに転用されるのが嫌なので(実際に転用されたことがある)、残念ながら資料にはパスワードをかけている。
講義の内容は『京都企業が世界を変える』、『京都大学で学ぶ企業経営と株式投資』、『京都大学の経営学講義 いま日本を代表する経営者が考えていること』の3冊に掲載している。今年も講義の内容を出版するつもりでいる。
3年間、経営者の話を聞いて思うのは、講義を依頼してきた企業(上記3冊に登場する16社)の元気の良さである。元気の良さそうな企業を選んだので当然なのだが、それと比べて日本の名門企業の多くが元気を失っている。
この事実を思い出しつつ、今日、学生に伝えたかったことがある。就職した企業に定年まで勤務しているのかどうか怪しい、むしろ長居しないつもりで働くのが正しいということである。僕らが就職した時代は恵まれていた。日本の高度成長期の名残があった。しかし、その頃の就職を今から振り返ると非常に怪しい。銀行、証券、保険会社の中で、昔の名前で残っている企業が今、どれだけあるのか。製鉄業界はどうなのか。日立や東芝といった重電機は、大手化学は、造船や重機は、電力は。
それよりも、日本でも新しい企業が頭角を現している。講義の16社にも頭角が見てとれる。ましてや、世界を見渡せば、以前に書いたように、この20、30年内に登場した企業が(たとえばアップルやグーグルが)トップ企業になっている。
大学生にとって、卒業してすぐの就職は、1回目の選択でしかない。2回目はもちろん、3回目の就職も十分にありうる。
そう思うことが重要で、そうだとすれば(そこから逆算すれば)、大学時代から真面目に勉強することが大切になる。何も、つまらない授業に無理に出席せよとは言っていない。つまらなければ、自分で目標を設定し、勉強することである。
企業もそのつもりにならないといけない。新卒の採用だけが能ではない。優秀な従業員を中途で積極的に採用すべきである。とすれば、新卒の大学生の就職活動の解禁日なんて、どうでもいいことになる。適当に対処すれば十分だろう。他社が社会人教育してくれた元学生を横取りする、そのくらいの気概がないとダメだと思う。気概がないから、日本企業の地位が低下している。そう思っている。
ついでに言えば、採用した学生を会社のカラーに染めてはいけない。井の中の蛙になってしまいかねない。他社でも活躍できる従業員を育てるべきだろう。その従業員を奪われてもいいではないか。奪い返せば終わりだから。
2017/04/13