川北英隆のブログ

小型株バブルと日銀とポチ

先日、知り合いのプロの投資家が、日銀によるETF(上場投資信託)購入が小型株の価格形成を歪めている、ひょっとして小型株バブルが生じているのではないかと言った。
バブルの根拠として、売買代金と時価総額の比率(売買回転率)を計算し、それをグラフにしたものを見せてくれた。東証第1部上場株全体と小型株を比較してあった。
それによると、かつては両者に大きな差異がなかった。ところが、2012年後半(つまり第二次安倍政権の誕生)を境に市場全体の回転率が高まるとともに、小型株の回転率がそれ以上に高まった。その後、小型株の回転率がずっと市場平均を上回っている。
売買が活発になる(つまり回転率が高まる)ことは、株価が上昇する(上昇している)ことを意味する。実際、某証券会社の小型株指数を用いて市場全体と比較したところ、2015年に入って以降、小型株の上昇率が市場全体よりも明らかに高くなっていた。
数字で示しておく。2015年1月以降、小型株の上昇率は市場全体を累積で14%上回っている。2013年1月との比較では16%上回っている。
この理由の1つとして、小型株の業績が良いのではとも考えられる。現実には、小型株であれば猫も杓子も飼われている、違う、買われていることからすると、業績や企業の魅力度が、小型株買いの主な要因ではないだろう。ちなみに、小型株以外は企業を選別した投資が観察される。
小型株が買われる主な理由は、その値動きの良さにある。底流にあるのは、東証1部に上場されているだけで東証株価指数(TOPIX)連動ETFに自動的に組み入れられ、日銀が目をつむってコンスタントに買ってくれる金融政策である。小型株の上場株式数はそんなに多くなく、その株を保有している投資家の数が少ないから、日銀の買い入れは効果が大きい。株価が簡単に上昇する。
だから、個人投資家にとって格好の投資(投機)対象となる。別の表現を使うと、買うから上がり、上がるからさらに買われるのである。日銀の金融政策を前提とした提灯買いでもある。
この話には続きがある。以上の小型株バブルのことをファイナンスの教員に紹介したところ、「日銀は政権のポチになってるからな」と嘆いた。今は昔、相撲界では北勝海が北の湖のポチだと批判された。強いご主人に強いポチが従う。何だか怪しい。花咲か爺さんのポチなら嬉しいが。

2017/10/04


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