コーポレートガバナンス・コードの議論において、上場事業会社どうしの株式保有が問題となっている。株主総会対策のため、また経営者の自己保身のために互いに株式を保有しているのではないかとの議論である。
この事業会社どうしの株式保有割合が高水準を維持している。いろいろと聞くかぎりにおいて、事業会社は相互の株式保有の解消には向かっていないようだ。銀行との関係では、銀行が金融庁から株式保有の解消を迫られていることもあり、相互に保有比率を下げている。これに対し、事業会社どうしの株式保有に、今のところ何の制約もない。
株主総会対策もそうだし、経営者の自己保身という目的はなおさらのこと、事業会社が他の事業会社の株式を保有することは原則として批判されるべきである。では、極論するとして、事業会社による株式保有をすべて禁止すべきなのか。
コーポレートガバナンス・コードの会議において「すべて禁止」との意見も出た。とはいえ、これもまた極論だろう。企業買収や系列化など、企業戦略に大きな制約をかけてしまう。
結論を述べれば、事業会社が他の企業の株式を持つことが異例だとは言えない。問題は、どこまでが許されるのかである。これを議論せずに、すべて「禁止」は行き過ぎだろう。
イメージすると、上場会社が技術開発や情報提供などで互いに協力する、その行動の証として多少の株式を持ち合うとの行動があり得る。もう1つ、親会社と子会社の関係もある。
前者に関して、それは自由であり、互いに上場を維持していくことは当然である。
問題は後者である。一方の会社が他方の会社の経営に対して強い影響を与えるのであれば、影響を受ける会社は上場すべきでないと思う。影響を与える企業はともかく、それ以外の株主が完全な付け足しであり、最近とみに重視されてきている株主総会での権利が剥奪されているに等しいからである。表現を変えれば、株主総会を開催したところで、それは完全にお飾りというか芝居というか、それ以上ではない。
上場事業会社どうしの株式保有に関して、最初のステップは親子上場の禁止かもしれない。NTTとドコモ、日本郵政と銀行や保険との関係である。これが整理されなければ、つまり上場企業はNTTと日本郵政のみであり、それ以外は上場できないとの整理がなければ、上場事業会社どうしの株式保有の禁止を議論してもむなしいと感じてしまう。現状、この2つの巨大グループ自体が、事業会社による他の事業会社の株式保有を暗黙のうちに認めているからである。
この例外を当然のこととして認めつつ、他の事業会社の株式保有を禁止しようというのは、政府のご都合主義と思われても仕方ないのではないのかと思ってしまう。
2017/11/17