親会社と子会社が同時に上場しているケースがある。日本だけの慣習なのかどうかはともかく、寡聞にして、アメリカの親子上場の事例は知らない。一方の日本では、NTTとドコモ、日本郵政と郵貯や簡保が代表的であり、政府が親子上場を大いに活用している。
日本の民間はというと、かつて親子上場制度を活用してきたパナソニックが解消を進めている。今ではほとんどないのではないか。日立も同様に解消を進めている。イトーヨーカドーと7-11も典型的な親子上場だったが、これも解消した。
連結会計の時代になり、親子が共に上場しているのはおかしい。親会社の株主は子会社の間接的な株主でもある。では子会社の株主はどうなのか。親会社がいるので、経営権に対する県政機能が弱すぎる。会社法上の規程はあるものの、個人株主はそんなものを知っているわけでもない。
コーポレートガバナンス(企業経営に対する統治)の議論が活発である。金融庁のコーポレートガバナンス・コードの議論が日本の最先端を走っている。
このコード(ソフトなルール)の議論において、事業会社どうしの株式持ち合い、いわゆる政策保有に焦点が当たりつつある。経営者の保身のため、上場企業が互いに株式を持ち合うのは変だとの議論が主流を占めている。会議のメンバーで、この点に反対する者はいないだろう。
しかし、親子上場に関してはどうなのか。親子上場は株式持ち合いというか片持ちというか、政策保有の代表事例である。子会社の社長を解任できる者は親会社以外にいない。一般株主に対して、株式を買い集め、企業買収を提案する権利もほとんど剥奪されている。つまり、株主の権利のうちで一番重要な企業を統治する権利がないに等しい。
子会社の株式という、一種の「まやかしの株式」を上場させて良いものなのか、そういう議論が生じて当然だろう。難しいのは、親子上場を排除すべきだとして、では何%までの株式保有が認められるのか、1/3までなのか、20%まで、10%まで等である。
先のコードのフォローアップの議論において、事業会社の政策保有を禁止すべきとの極論も出された。それが正しいとして、では事業会社の定義とは何なのかが難しい。非上場会社が上場会社の株式を保有することもあるが、これは許されるのか。海外の事業会社が日本企業の株式を保有することはどうなのか。金融機関はどうなのか。
多分、禁止発言したメーバーがここまで考えているとは思えない。
要するに、何を是とし、何を否とするのか。しっかりと頭の中を整理して議論すべき対象である。
僕としては、そこまで難しく考える必要はなく、親子上場(50%超保有されている子会社の上場)以外は、開示制度の改善と、開示を支える取締役会の責務の問題にしたほうがいいと思っている。以上、とりあえずの結論を書いてみた。
2017/11/24