今日の日経3面に「気がつけば格付け先進国」との見出しの記事があった。日本企業の信用格付けでA格以上という信用力の高い企業の割合が75%に達し、アメリカよりも上になったとの内容である。そこに僕のコメントも引用されていた。「ええっ」と思った。
まず、日本の信用格付けについて、記事は格付投資情報センター(R&I)のものがベースになっている。日本にはもう1社、日本格付研究所(JCR)がある。いずれにしても、日本の格付けは海外系との比較で甘い(信用力が高い方向に評価される)。この点からすると、アメリカよりも日本企業の信用力が上だと、本当に言えるのだろうか。
記事では米系のS&P社の格付けでも80%がA格以上だと書いてあるが、そもそも日本でS&P社の格付けを取得している企業数が少ない。バイアスが生じていると思える。
もう1つ、バイアスが生じる可能性として指摘すべきことがある。信用格付けを取得するのは、当然、社債を発行しようとする企業であるが、アメリカと異なり、日本ではジャンク債市場(経営破綻する可能性の高い企業の社債市場)が発達していないどころか、皆無に近い。
日本の投資家が、サラリーマンの特性として、「企業の経営破綻と、それによる社債の元利金支払い不履行」を極端に恐れるからである。元利金支払い不履行が生じれば、その事実だけに目の色を変え、上司が怒るからである。
実態はジャンク債(格付けでトリプルB格未満)だけではなく、その一歩手前のトリプルB格(A格の1つ下の)社債も嫌われている。いつ、トリプルB格未満に転落するか、心配で心配でというわけだ。
つまり、信用力の低い企業は日本で社債を発行できないに等しい。このため、格付けの取得もしない。これに対してジャンク債市場のあるアメリカでは比較的自由に社債が発行できる。だから、低格付けの企業が多くなる。
もっとも、日本企業の自己資本比率がアメリカ企業並みか、それよりも高くなっているのも確かである。信用格付けが自己資本比率だけでは決まらないものの、日本企業とアメリカ企業の格差がなくなってきたのだけは事実だろう。
それで僕のコメントである。企業の財務戦略が異なり(借入を多くしたいという企業がいてもいいのに)、投資家の好みがA格以上に偏るのは、投資家としての「長期戦略の欠如」とあった。
いつ記者に語ったコメントなのか、社債の格付けに関してしたのか、記憶が定かでない。少なくともコメントしたのはかなり前である。まあ、記事の論理のようにコメントしたとしても不思議ではないのだが。
2017/12/24